第27話【詩】レコード

 あなたが私に刻んだ溝


 いつまでも消えない溝


 愛おしく


 懐かしく


 苦しくなる


 まるで 甘い毒のような レコード


 忘れたい 忘れられない


 忘れたと思っていても


 結局は 思い出す


 それは 見て見ぬふり と呼ぶもの


 本能は


 わがままで


 自由で


 私を苦しめる


 穏やかに


 ささやかな幸せを


 噛み締めるだけ


 それだけでいいのに


 もう一度


 まだ まだ 足りないと


 身のうちの魚が 暴れ


 正常の波から 飛び跳ねて


 あなたがつけた傷を 月の元に晒す


 月はそれを眺め


 そっとなぞっては 笑う


 嘲笑うかのように


 慈愛のこもったまなざしで

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