第13話 唯一のモテ期の味は生涯続く

 夢を見た。

 旦那じゃない若い男の人が、泣きながら私の父に『私を嫁にください』と頼み込んでいた。

 私はじーんと感動していた。

 ……という内容だ。

 この若い男性が誰なのかを、私は知っている。

 我が人生唯一のモテ期に、私に好意を抱いてくれた人だ。

 ちなみにそれはもう二十五年も前の話だ。

 私は当時二十三歳だった。

 とある会社で正社員で働いていた私と、同じ職場で働いていた二つ歳上の人だった。

 ちなみに真面目すぎるくらい真面目な人で、気持ちを伝えられたのは私が社内にでき婚を伝えた直後、手紙でだった。

 その手紙の最後には“読んだら捨ててくれ”とあったし、旦那の目に触れさせたくなかったから、私はちゃんと捨てた。

 けれど、やっぱり嬉しかったんでしょうねぇ……

 私はその四年後に退職し、それ以来その人には会っていないしこの先も会うことはない。

 単に私の中の輝かしい思い出として、こうしてたまに夢にでてくるんだろうなあ。

 その方には気の毒な気がするけれど。

 仕方ない。

 モテない人間の貴重なモテ期の輝かしい記憶は、とっても貴重なのだから。

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