第4話 セカンド インパクト2
時刻は夜の9時。ぼくとゆめちゃんはリビングの大きな黒いソファに並んで座り、ボンヤリとそれを眺めた。
外からは「ザザァァァ……」と雨の音が聞こえる。雨脚はさっきより強くなっていた。
そしてぼくらの目の前には、あの不思議な魚が2匹、空中を優雅に泳いでいた。それは滑るようにリビングを海遊している。そして彼らは一定の間隔で透明になったり姿を現したりを繰り返していた。
「それじゃ……、すい君が地下室から持ってきた小瓶の中に、この透明な魚が入っていたってこと? 」
ぼくはゆめちゃんにキッチンに現れた地下室の話と、そこにあった小瓶をいつのまにか持って返ってきてしまった事を伝えた。
それから直ぐにぼくらはキッチンに行ってあの階段を探したけれど、やっぱり地下室への入り口は見つからなかった。
「その魚がわたしの……、その……、ち、血を飲んだ事がきっかけで、あんな形に変化したんだよね…… 」
ゆめちゃんの生理の血を舐めた魚はミサイルみたいな形に変化している。ぼくの精子を食べた魚の方は飛行機に似た形に落ち着いていた。
「すい君もこの魚に血を吸われたの? 」
「う、うん……」
ぼくは返答に困る。まさかオナニーしていて精子を食べられたなんて言えない。
「うーん、消えた通路……。不思議な地下室と白い土管……。お札みたいな紙が貼られた小瓶。そしてその中から出てきた透明の魚かぁ……」
ゆめちゃんは考え込んでいた。何かを真剣に思案しているゆめちゃんも知的な感じがして抜群にかわいかった。濡れた髪がセクシーだ。
「もしかして……」
「あれ? ゆめちゃんは何か思い当たる事でもあるの? 」
ゆめちゃんの頬は桜色に染まり、メガネがやや曇っている。ゆめちゃんはにわかに興奮しているようだった。
「うん……。多分、これは……、あの空魚じゃないかしら」
「あのくうぎょ? 」
「そう。空を飛ぶ目には見えない魚……」
「えっ……、な、何それ?」
「すい君。この世界にはね。まだまだわたし達の知らない不思議な生き物がたくさんいるのよ。空魚っていうのは、わたし達のいる世界と平行に存在している別の宇宙で暮らす魚なの。並行世界だから普段はお互いを見ることも触れることもできないんだけれど……」
そう言ってゆめちゃんは、空を泳ぐ魚に触れた。魚は嬉しそうに体を揺らせると、ゆめちゃんの指先に纏わりついてくる。
「どうやったのかは分からないけれど……、その空魚を捕まえて小瓶に閉じ込めた人がいたのね。おそらくはわたし達の前にこの家に住んでいたという謎の多いご夫婦が絡んでいると思う。きっとその地下室は秘密の儀式の部屋か何かで、そこでなにか魔法みたいな力で異界の扉を開き、空魚を捕まえて瓶に封印していたんだよ。何も知らないすい君は、偶然、地下室の封印を解いて空魚を放してしまった。そして放たれた空魚はわたし達の血を吸って実体化した……」
「……ほ、ほ、ほう」
ぼくはパニックになったフクロウみたいに呻いた。
ゆめちゃんの推理は完全にB級ホラー映画みたいだった。ぼくは全然事態が飲み込めずにポカンと口を開けてゆめちゃんを見つめ返す。
「すい君、これは大発見だよ! わたしの目の前に生きたUMAが……」
興奮してきたゆめちゃんの鼻息がどんどん荒くなってくる。メガネはさらに曇っていた。
「ゆ、ゆめちゃん……、ちょっと待って。まず、その空魚ってさ、そもそもどこで知ったの? 」
「前に読んだ『ムー』っていうオカルト雑誌に載ってたよ! ブライアン・ユズナのホラー映画にもちょくちょくでてくるし、ネットの掲示板でも話題になることが多いし……」
「ほほう……」
ゆめちゃんのネタ元は全く信憑性がなかった(オカルト雑誌にホラー映画って……)けれど、実際に目の前には半透明の魚が2匹、空中を泳いでいた。
「……空魚」
ぼくの呟きに反応して、飛行機みたいに変化した1匹がぼくの頭の周りをクルクル回った。
とりあえず、この魚は襲ってきたりしないみたいだった。不思議とぼくとゆめちゃんによく懐いている……。
まあ、どんなにありえない生き物でも目の前にいるものはしょうがない。それに何にしても名前は必要だったので、とりあえずぼくの部屋にいた大きな羽の飛行機みたいな方を空魚1号。ゆめちゃんの生理の血を飲んでロケット型に変化した方を空魚2号と名付けた。
1号はぼくの頭の周りを旋回しながら、時たま、ぼくのちんちんに寄ってきて口をパクパクさせる。きっとエサがほしいのだろう。
今は絶対、無理……。
2号は比較的落ち着いていて、ゆっくりとした速度でゆめちゃんの腰の辺りを回っていた。
ところがふいに、2匹の空魚は同時にリビングの入り口のほうを向いた。空魚達には目がないけれど、2匹とも頭を同じ方向に向けて何かを伺っている様子だった。
それから魚達はまるで威嚇するようにヒレをバタつかせた。
「何かいるの? 」
ゆめちゃんが問いかけたけれど、空魚達はリビングの入り口近くの一点に向けてヒレをバタバタと揺らすだけだった。しかし空魚達が見つめる空間には何もいない……。
しばらくすると2匹は何事も無かったようにまた部屋の中をスイスイと泳ぎだした。
この魚の行動は謎ばかりだった。
……。……。
それからぼくらは、結局、自分の部屋に戻って寝ることにした。
これ以上、いくら相談してもこの魚がなんなのか分かりそう も無かったし、とりあえずぼくらに危害は加えてくる事も無さそうだった。
ぼくはゆめちゃんの部屋の前で「おやすみ」と言った。ゆめちゃんは不安そうにうつむいたまま呟く。
「この魚……、突然、襲ってきたりしないよね」
「……多分、大丈夫だと思う」
「ねぇ、すい君……。あの……。よければ……、今夜は一緒に寝ない? 」
「な、な、なんですと!? 」
取り乱したぼくは叫ぶように聞き返した。
「あっ! ご、ご、ごめん、変なこと言って……」
ゆめちゃんは真っ赤になってバタバタと自分の部屋に入ってしまった。
しまったぁぁ!! やっちまった……。
11年の我が人生で最大の失敗だ。ゲームのメッセージを読むのが面倒くさくなってテキストのスキップボタン連打してたら、突然、重要な選択肢が現れて、思わず意図と違うチョイスをしちゃった時みたいだ。
今の一瞬、確かにゆめちゃんとの添い寝イベントが発生しかけたのに!!
フラグが立っていたのにぃぃ……。
ぼくは悔しくてジタバタする。
諦めきれない……。ああ、ゆめちゃんとリアルベットインのチャンスだったのに……。せっかくゆめちゃんの方からベットに誘ってくれたのに……。これだから童貞はダメなんだ! 獲物を探す肉食獣みたいにどんな時も目を光らせていなければ、ぼくは一生童貞のままや……。
後悔はいつまで立っても消えなかった。
そしてぼくは悟った。
人生という名のゲームはいつ何が起こるか分からない。細心の注意を払って望まなければ童貞は捨てられない!
諦めきれないぼくはイライラして部屋をグルグルまわる。空魚1号は我介せずと言った感じで、相変わらず呑気に空中を旋回していた。
ぼくは空魚1号の頭を叩いた。
単なる八つ当たりだ。
1号はビクッと怯えてぼくから離れたけど、すぐにまたスーッと寄ってきた。
意外にかわいい奴なのかもしれない。
……。
……。
その夜はなかなか眠れなかった。
しとしとと降り続いている雨の音をボンヤリ聴きながら、引っ越してきたばかりの見慣れない天井を眺める。そこにはスイスイと空魚が泳いでいた。
半透明の空魚1号は寝ているぼくの頭上を飽きもせずクルクルと回り続けていて落ち着かなかったし、不思議な地下室のことも頭に引っかかっていた。
どうして地下室の入り口は閉ざされてしまったのだろう……。いや、むしろどうして地下室の扉はあのタイミングで開いていたんだ? あれはまるでぼくを招き入れているみたいだった。けれど潜った先の地下室には土管と空き瓶が2つあっただけ……。そもそも、あの場所はなんのためにあるんだろう……。あの不思議な部屋にあった白い土管は一体何なんだろう……。どこかに繋がっているのかな??
「コン、コン」
不意に扉をノックする音が聞こえた。
「すい君……、起きてる? 」
ドアの向こうから囁くような声が聞こえてぼくは飛び起きた。
急いで部屋の扉を開けると、そこにはモコモコしたパジャマを着て枕を抱いたゆめちゃんがいた。ぼくはボカンと口を開けて、可愛すぎるゆめちゃんを眺めた。
「すい君、寝てたのにごめんね……。なんか気になっちゃって、なかなか寝付けなくて……」と言ったゆめちゃんは一緒についてきた空魚2号を指差した。
「うん……」
ぼくはまたもや固まってしまう。
一体なんて言えば……?
頑張れ童貞! 今度こそベストな切り返しでチャンスを活かさなきゃ! ここが人生の分岐点やでぇぇ!!
しかしぼくは頭がパニックになって言葉が出てこない。
早く……、早く、選択肢出てっ!!
「やっぱり……、一緒に寝てもいい? 」
うほほぉぉぉ!!
頭の中に選択肢が浮かぶより早く、ゆめちゃんが消え入りそうな声で言った。そしてぼくの返事も聞かずに、ゆめちゃんはぼくが寝ていたベットにもぐりこんでしまった。
こ、この展開はぁぁ……!?
そ、そ、そ、添い寝イベント発生やぁぁ!!
やった! き、奇跡や!!
今の分岐は無言が正解だったのか。このゲームは難しすぎる……。
「お邪魔……、しもうす……」
緊張で訳のわからない言葉遣いをしてしまう。それからぼくはひどくギクシャクとした動きで夢ちゃんと同じ布団に……、そーっと入った。
空魚2号もヒラヒラと空中を泳ぎながらぼくの部屋へ入ってきた。空魚1号と2号は仲良くぼくの部屋を回遊した。
ゆめちゃんはメガネをかけたまま布団をかぶっている。まだすぐには寝る気がないみたいだ……。
き、緊張する……。
何か話した方がいいのだけれど、こんな時に何を話せばいいのかぼくには全くわからなかった。
ゆめちゃんはぼくに背を向けて丸くなっている。シャンプーの匂いに混ざって仄かに甘い香りがした。
これが女の子の匂いかぁ……。
ぼくはドキドキして、とても眠れそうになかった。
……。
……。……。
……、ふと気がつくと夜中の3時だった。緊張でとても眠れないと思ったのに、ぼくはいつの間にか寝てしまったらしい。
外からは相変わらず柔らかな雨の音が聞こえてきた。
夢ちゃんはなぜか180度回転した状態で、メガネをかけたまま、静かに寝息を立てていた。お尻はぼくの顔の前にあった。ショートパンツのお尻から薄っすらと下着のラインが見える気がした。
一瞬にして目が冴えてしまったぼくは、目の前のお尻に集中せざるを得ない!
ゆめちゃんのお尻をじっと見ていると、ショートパンツの向こう側にある生パンツが透視できる気がした。
ゆめちゃんはどんなパンツを履いているのだろう……。ピンクかな……、それともやっぱり白かな……、いやいや意外に黒だったり?
見たい、見たい、見たい……。
し、し、下着が……、見たいです!!
ぼくが心の中でそう叫んだ時、空魚1号がおもむろに近づいてきて、夢ちゃんのモコモコしたショートパンツを口でくわえてずり下げた。
プリンっと生パンとお尻が現れた!
ぼくの目の前にはゆめちゃんのグレーのパンツ!!
思わずゴクリと唾を飲み込んだ。思ったより大きな音がして焦る。けれどゆめちゃんは静かに寝息をたてて動かない。
パンツの端からは生理用ナプキンがはみ出していた。甘いミルクのような香りに混じって、少し生臭い血の匂いがした。
うおぉぉ! 夢にまで見たまさに夢見の生パンンンン!!!
ぼくは目の前にあるパンツを凝視する。そのシワの一つ一つまで頭に刻み込む。もしゆめちゃんのパンツのシワが試験問題なら、ぼくは間違いなく100点が獲れる!
そしてパンツのシワから、ゆめちゃんのおまんこを想像した。白い太ももの間にあるグレーの布さえどければ、ゆめちゃんのアソコはすぐそこだった……。
ぼくはゆめちゃんのパンツに全神経を集中させた。
しかし……、ダメだ!
ナプキンが邪魔でおまんこの形がよくわからない!
見たい……、見たい……。ゆめちゃんのアソコが見たいんやぁぁぁ! パ、パンツをめくって中身が見たいぃぃぃぃ!!
すると……、空魚1号が夢ちゃんのパンツのサイド部分を、その羽のようなヒレでスパッと切断した。それから破れたパンツの生地を口で咥えて器用に剥がす。
まるでぼくの願いが分かるみたいに1号が動いた。
な、な、な、なんてデキルやつなんだ、1号ぅぅ!! ぼくはお前を拾ってホントによかった!!
空魚1号は少し得意げに胸ヒレを揺らせた。
そしてゆめちゃんのおまんこが、ぼくの鼻先で露わになった。
うおおおおお!!!
ぼくは初めて女の人の性器を生で見た。
ゆめちゃんのおまんこはお尻の穴の近くまでまばらに毛が生えていて、ピッタリ閉じた割れ目はポッテリとした貝みたいだった。
それを見ただけでぼくのちんちんはムクムクと大きくなっていった。ゆめちゃんのいやらしい膨らみを指で広げて、その中を見てみたい……。
おまんこを触った感触ってどんなだろう??
さ、さ、さ、触って……、みたい。
ぼくは目の前にあるゆめちゃんのおまんこを触るかどうかでひとしきり悩む。すごく悩む。もし触ってしまったらゆめちゃんは起きるかな? 起きたらこの状況をどんな風に思うのだろう?
……し、しかし! 今、目の前におまんこがあるのだ。鼻先にゆめちゃんのおまんこ!
今触らなくていつ触るというんだ!!
ぼくはそっと指先をゆめちゃんのおまんこに近づける。
……いやいやいやいや、ダメダメ!
伸ばした手を引っ込める。
これはゆめちゃんの意思じゃない。勝手に触ったら絶対まずい。絶対に怒られる。
でも目の前には白い太ももと柔らかそうなお尻。そしてその付け根に魅惑の割れ目が……。ちょ、ちょっとくらい……、いいかな? お尻くらいなら、……いいんじゃないかな? 減るもんじゃないし。……いや、どうせ触るならおまんこの方が……。ちょっとなら……、ホントにちょっと触るだけなら気づかないかもよ……。
ぼくはゆめちゃんのおまんこを目の前にして悶絶する。
頭に選択肢が浮かびかけた。
しかし、その時!
今度は空魚2号が音もなく近づいてきた。そして2号はロケットのように緩やかに尖った鼻先を夢ちゃんのおまんこに充てた。
な、な、な、なにぃぃぃ!
2号! お前は何してるんやぁぁぁ!!
2号はその鼻先をゆっくりと割れ目に沿ってなぞりはじめる。空魚の鼻先は夢ちゃんのお尻の穴あたりから、割れ目の上の方までを繰り返し往復する。
「んんっ……」
夢ちゃんが甘い吐息を漏らした。
この時、すでにぼくのちんちんはギンギンに勃起していた。かつてないほどにガチガチに立っていた。
すると突然、空魚1号がぼくの下半身に頭を滑り込ませてきた。1号は素早くぼくのパンツの中に入り込む。そしてぼくのちんちんは何か生暖かいものに包み込まれた。
「うっ! 」
あまりの気持ち良さにぼくは一瞬で射精してしまう。ちんちんがビクビクと痙攣して、頭の中は何かの液が広がっていくような快感で満たされていった。
ぼくの目の前では2号が夢ちゃんの割れ目に、その口をまん丸にしてヌルヌル光る愛液を吸い取っているのが見えた。
「んん……。ぁぁ……」
夢ちゃんの呼吸もだんだんと荒くなっていく。
そっか! 2号はゆめちゃんの体液を吸収するためにエロいマッサージをしているんだ。
つまり……、空魚のエサは人の体液なんだ。
ちなみにぼくのパンツに潜り込んでいる1号は、まだちんちんを飲み込んだままだ。1号はぼくの精液がほしいのだろう。どうやっているのかわからないけれど、ぼくのちんちんは幾つもの小さな舌でやさしく舐め上げられているような感じがしてムズムズする。そしてそれは……、とても気持ちがよかった。射精したのにちんちんは硬いまま、むしろさらに大きくなっていく。
目の前にある夢ちゃんのおまんこは、白く濁った粘っこい液と赤黒い血を溢れさせている。
2号は機械のように一定の動きで割れ目を鼻先でなぞり、溢れてくるエッチな液をまんまるの口から吸い込んでいたけれど、不意にその動きを止めた。
「ぅぅん……」
夢ちゃんの悩ましい溜息。そして物欲しそうにお尻が震えた。
それから……、ゆめちゃんの足が片膝を立てるようにしてゆっくり開かれていった。
ぐぅほおおおっ!!
さっきまでピッタリ閉じていた割れ目がネットリと開いて、内側のピンク色の粘膜と小さなクリトリスが見えた。ゆめちゃんのお尻の穴はヒクヒクと伸縮していた。
すると2号の目のない顔の額あたりから、丸い塊のようなものがニョッキリと突き出してきた。それは丸い玉に紐がついているような形で、チョウチンアンコウによく似ていた。
2号は頭から生えてきたその丸い玉を、ゆめちゃんの充血してコリコリしているクリトリスに充てがった。玉はまるで小さな口でもついているみたいに夢ちゃんのクリトリスをすっぽりと包み込む。
「はぁぁぁんん! 」
エッチな喘ぎ声! ゆめちゃん、完全に感じてる!!
「ああっ……、はあっ! あっ、ああっ! 」
いやらしい喘ぎ声とともに、ゆめちゃんは全身を小刻みに震わせている。
ぼくの股間では相変わらず1号がちんちんを刺激していた。
「うっ! 」
ぼくは夢ちゃんのいやらしい姿を間近で見ながらまた射精した。
パ、パラダイスやぁぁ……。
……結局、その晩ぼくは4回も射精してしまった。そしていつの間にか寝てしまった……。
……。……。……。
……。……。
……。
朝、目を覚ますとぼくは1人だった。
横で寝ていたはずのゆめちゃんが居ない。ベットがやけに広い。部屋は昨日の夜と何も変わらないはずなのに、引越したあとの空き部屋みたいにガランとして見えた。なんだか心細いような不思議な不快感……。
それからふと思い当たって、自分のパンツを見る。何回も射精したはずなのにパンツの中はあんまり汚れていなかった。
一瞬、昨晩の出来事は全部夢なのかと思ったけれど、部屋の中には空魚1号がまるで何事もなかったかのようにヒラヒラと宙を泳いでいた。それにベットのシーツには、ゆめちゃんから溢れた体液の染みが残っている。
昨日の夜、確かにぼくはゆめちゃんのおまんこを見たんだ……。なんだか少し大人になった気がした。
カーテンを開けると、切れ切れの白髪みたいな雨がシトシトと降り続いていた。ぼくは下着を替えて服を着替えるとリビングへ向かった。
リビングにはゆめちゃんがいた。
ゆめちゃんの顔を見た途端、さっきまでのよくわからないモヤモヤした不思議な気持ちがスッと晴れて、代わりに昨晩の出来事の気まずさが溢れてきた。
ゆめちゃんはシャワーを浴びたみたいで、髪の毛をバスタオルで拭きながらインスタントのスープを飲んでいた。
空魚2号はゆめちゃんの頭上をゆっくり泳いでいる。
「お、おはよう……。すい君……」
夢ちゃんは目線を外してぼくに挨拶した。メガネが反射してゆめちゃんの瞳が見えなかったけど、頬っぺたは真っ赤だった。
つられてぼくも赤くなる。
「お、お、おはよ!」
気まずくてどもってしまう。
「あっ……、スープ飲む? 」
「う、うん」
スープの粉をマグカップに移しながら、ゆめちゃんが言った。
「昨日は……、その……、ごめんね」
「あっ……ぜ、全然、平気。……ゆ、ゆめちゃんのおしり……、い、い、いや、ね、眠れた? 」
「えっ? ……う、うん」
ゆめちゃんは俯いて耳まで赤くなっていた。ゆめちゃんは昨夜、途中から起きていたはず……。それはそうだ。あんな事をされたら誰だって目が覚める。そしてゆめちゃんは2号におまんこをいじられて確かに感じていたんだ……。
「わ、わたし……。ああいうの初めてだったから……、ど、どうしたらいいのか……」
「ぼ、ぼ、ぼくも……」
僕らは何を話していいのかわからずに、お互い真っ赤になって黙り込んでしまう。
とうの空魚達は呑気にリビングを泳いでいた。そんな2匹の様子を見るともなく視線で追っていたゆめちゃんのメガネがキラリと光った。
「この子達はきっと……、人の体液を主食にしている生き物なんだね」
「う、うん、そうだね。きっと最初に体液を食べさせてくれた相手に懐くんだね……」
「この子達、昨日からずっとわたし達の側から離れないものね」
「うん、でもこんな風にいつも側を飛び回られていたら学校にいけないよ」
「最初の時みたいに姿を消せればいいのに……」
そうゆめちゃんが言った時、空魚2号は突然、透明になった。
「えっ? 」
僕らは驚いて部屋を見回す。1号は変わらず黒いソファの上を優雅に浮遊している。けれど2号はどこにも見当たらない。
それから少しして、2号は丸いダイニングテーブルの上に姿を現した。
ぼくとゆめちゃんは顔を見合わせる。
そういえば昨晩、ぼくがゆめちゃんのおまんこが見たいと思ったら、空魚1号はゆめちゃんのパンツを脱がせた……。
「もしかして……」
ぼくは頭の中で1号に命じる。
姿を消せ。
すると1号はすぐに透明になって見えなくなった。
「やっぱり」とぼくはうなづく。
「すい君? 」
「ゆめちゃん! この魚はぼくらの思い通りに操ることができるんだ! 」
ぼくはそう言って1号に姿を現わすよう心の中で命じる。すると1号はぼくのすぐそばに現れた。
「ほらね! 多分、1号はぼく。2号はゆめちゃんの思い通りに操れるんじゃないかな? 」
「ええっ!? ホントに? 」
それからぼくとゆめちゃんは空魚にあれこれ命令を与えて、どのくらいこの魚達が言う事を書いてくれるのか試してみた。
姿を消したり動きをコントロールするのは簡単だった。ただ心の中で動きをイメージするだけで、空魚は思い通りに動いてくれた。また透明になれば扉や壁をすり抜けることもできた。
「なるほど便利ね! これなら家の鍵を忘れても簡単に開けられちゃうね」
「うん! すこい能力だね。それに姿も自在に消せるなら周りにもバレないで済むし、これで学校にもいけるよ」
空魚1号の力を使えば……、鍵が掛かっててもお風呂が覗けちゃうじゃん!
ぼくは昨晩の事を思い出してウットリとほくそ笑む。
「あっ! ちょっとすい君、時間、大丈夫? 」
空魚に夢中で時間を忘れていた。時計は7時50分を指していた。
「あっ!! やばい、遅刻だ! 」
ぼくらはバタバタと家を飛び出した。
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