第84話 危険を共にするよりも
「それじゃあ、ノイズとモモに怪我をさせないようにね」
「それは困った命令ですが、仕方ありません。了解です」
不安そうなサクラとは対照的に女の子がニコニコと笑い返事をする。ぎゅっと両手をつかむサクラを見て、ふぅ。と一つ深呼吸をすると、サクラを置いてノイズのいる方へと走り出し、歩いていたノイズは立ち止まり、モモがノイズの周りをグルグルと動き出した
「モモ……」
ノイズが小声で名前を呼ぶと、ノイズの手のひらの上でページをめくりはじめたモモ。バラバラとページを勢いよくめくり数枚の紙が破られると、紙が燃え、大きな炎となってサクラ達に向かって飛んできた
「初対戦にしてはちょっと高度術者すぎるかな」
苦笑いで炎を避け続けていく女の子。ちらりとサクラの方を見て頷くと、サクラもゆっくりと頷いて大声で叫んだ
「ミナモ、ノイズとモモを止めて!」
サクラの声を聞いて、ノイズに向かっていたミナモの周りに水が浮き出て、モモが出す炎を打ち消していく。炎が消され、ノイズやミナモの足元に濡れたページが落ちて、モモが慌ててページを増やし炎を飛ばすが、炎を消し避けられ、ノイズが少し後退りをしたその時、ミナモの周りに浮いていた水がノイズの体に巻き付いた。ノイズが水から離れようと体を動かすが、巻き付いた水は離れず、その間にミナモがノイズの隣に来て、ふぅ。と一つ深呼吸をした
「術で術者を止めるには、その術者の魔力を越える魔術と魔力がいるんだよね」
そう独り言のように言うと、少し振り向きサクラを見て手招きをする。それを見てサクラが恐る恐る二人の所へと歩いていくと、モモが居ないことに気づいて辺りを見渡す
「ねえ、ミナモ。モモは……」
「ノイズの魔力が今、少し減って消えただけだから大丈夫です。落ち着けば帰ってきますよ。たぶん」
サクラとミナモが話していると、ノイズがうつ向きながらペタンと座り込んだ。それを見てサクラが不安そうな顔でミナモを見ると、ミナモは二人の顔を交互に見た後サクラに問いかけた
「どうしますか?」
「どうするって、ノイズの魔力なら返さないと……」
「返すって簡単に言いますけれど、主の魔力を受けないよう魔力と術を戻すって、とても大変なのですよ。主が不安定な力のままの今、二人共危険になります」
「でも……」
ミナモからの話を聞いてもまだサクラが戸惑っていると、ふぅ。と一つため息をついて、ミナモがまた話しはじめた
「簡単な方法はですね、主のものにしちゃうことです」
「私のもの?」
ミナモの話にサクラが首をかしげ聞き返すと、うんと一度頷いたミナモがサクラの胸に手を当てると、ミナモの胸にも手を当てた
「そうです!ノイズの魔力とモモを主の力にして、私と一緒に使うんです。それなら、ノイズも主も危険な目にはあいません」
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