第78話 この本の代わりの世界へ

 ソナタに呼ばれ、施設の中を歩くノイズ達。一番最後には辺りを見渡したながら不安そうにサクラが歩いている

「ねえノイズ、この先何があるの?」

「さぁ、覚えてない」

「ノオトだって覚えてないの?」

「覚えてないから聞いているの。ノイズは私よりここら辺来ているでしょ?」

「知らないもんは知らない」

 ノオトの話しに不機嫌そうに答えるノイズ。そんな二人の話をサクラが困ったように聞いている


「二人とも、喧嘩しちゃダメよ」

 一番前で歩くソナタが、はぁ。とため息つきながらノイズとノオトに注意すると、リリもサクラの肩に乗り、はぁ。とため息をついた

「それに二人が知らないのは当然よ。ここは私達高度術師しか入れないから。最低でも、オンプに認めてもらわないと来れないし」

 メメの言葉を聞いて、言い合いをしていたノオトとノオトの会話が止まりサクラが少しホッとした顔をした。そのまま、誰も話をすることなく施設の奥へと歩いていくと、見上げても先が見えないほど大きな扉の前に来た。サクラが口を少し開いて驚いて

いる前でノイズとノオトも見慣れぬ扉に呆然としていると、ソナタが微笑みながらノイズもノオトに声をかけた

「さてと、二人とも開けて」

 そう言われ顔を見合わせる二人。すると、ノイズが少しうつ向きながら顔を横に向けた

「私はどうせ……」

「どうせでもいいから、開けてみなさい。ノオトちゃんもね」

 言い終わる前にソナタに言われ少しムッとしながらも大きな扉に触れる。扉は開くことなくノイズが小さく顔を横に振ると今度はノオトが扉に近寄りノイズの隣で扉に触れるが、同じく扉は開かない。それを見てソナタが少し離れて様子を見ていたサクラの方に振り向いて手招きをした

「次はサクラちゃんね」

「はっ、はい!」

 ソナタに言われ少し声を大きく返事をすると、早歩きで二人のいる扉の前に来ると、恐る恐る扉に手を伸ばす。震える指先が扉に微かに触れたその時、ギィっと木の軋む音をたて扉がゆっくりと開いた

「えっと、開きました……」

「そうね、ありがとう」

 少し声を震わせ言うサクラの声に対しソナタはニコッと微笑み答えると、スタスタと歩き三人を追い越し扉の先に入っていく。ノイズ達がその様子を見ていると、サクラの頭をリリが軽く叩いた

「ほら、全員さっさと入る」

 リリに言われノイズを先頭に渋々入ると、見上げても天井の見えない部屋の中は暗く、側にある見上げても一番上が見えないほどの大きな本棚から本が浮び、サクラ達の周りを無数の本が飛んであちらこちらへと飛んでいる


「あの、メメさんは……」

「ノイズの家にいる。帰れたら会えるよ」

 サクラが少し前を歩くノオトに恐る恐る声をかけると、ちらりと見られて答えられると、今度はノオトの隣を歩くノイズに声をかけた

「ねえノイズ、ここって……」

「さぁ、私も分からない」

 サクラの話にすぐ返事をすると、さくが申し訳なさそうに少し顔をうつ向くと、リリがはぁ。とため息をつく。その間に先を歩いていたソナタが立ち止まり、本棚や本を見渡しはじめた



「モモ、来なさい」

 一通り辺りを見終えた後、ソナタがそう言うと目の前にモモが現れ戸惑うようにグルグルと動く。元気そうな姿にサクラがホッと胸を撫で下ろしているとソナタがフフッと微笑みノイズ達を見た

「ノイズの側から離れないようにね」

 ソナタが言うとすぐ急ぐようにノイズの側に行くと、両手で抱き締められ、ノイズとサクラがふぅ。と深呼吸をする。そんな二人を見ることなくソナタは本が浮かぶ周辺を見渡している

「えーっと、サクラちゃんには……」

 ソナタが本を手に取り確認しながら呟いていると、サクラに向かって一冊の本が現れた。サクラの背よりも高く、分厚いその本に呆然と見ていると、


「それじゃあ今度はモモじゃなく、この本達の中に入ってもらおうかしら」

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