第50話 そのうた声は誰のために
「モモもうたえる?」
サクラの前で浮かぶモモに微笑みながら問いかけると、嬉しそうにサクラの周りをグルグルと動き回るモモ。ふぅ。と一つ小さく深呼吸をしてサクラがうたい始めると、モモがパラパラとページをめくり小さな光が現れた
「なにあれ……」
サクラがうたい始めて少し後、声を頼りにサクラの近くに着いたリディが木に隠れながら呟いた。少し遅れて来たノオトも楽しそうにモモとうたうサクラを見た
「あいつ、確かサクラだろ?なのにノイズの声だよな」
「サクラの術かも。それかモモが変えているのかも」
「なんで本が?」
「あの本、元々はノイズの本だからね」
二人がサクラに気づかれないように小声で話していると足取り重くノイズが二人の元に来てサクラを見てすぐ目をそらした
「でも、なんでモモが」
ノイズの様子を気にしながらリディがノオトに聞く。ノオトはノイズを見て見ぬ振りをしながらリディに返事をする
「遊びでかもしれないし、術かもしれない。近づいて止めよう」
「あれは……」
ノオトの言葉を止めるようにノイズがか細い声で呟く。その声が聞こえたノオトとリディがすぐに振り向くと、うつ向いていたノイズが顔を上げた
「私のうたなんかじゃない!」
と、大声で叫ぶノイズ。その声にノオトとリディが驚いて一瞬ビクッと体が動く。サクラとモモもノイズの声が聞こえたのか、三人の方に振り向いた
「私じゃないから!」
そう叫ぶと、林の奥の方へと独りでに走り出した
「おいっ!ノイズ!」
慌ててリディが手を伸ばし呼び止めるが、ノイズの姿はすぐ林の中へと消えていく
「私がノイズを追う。リディはサクラといてて」
「ノオト、ちょっと待って!」
ノイズの後を追いかけたノオトの姿もすぐに見えなくなり、どうしようかと戸惑うリディの側にサクラが恐る恐る近づいてきた
「あの……」
サクラの声が聞こえて、キッと睨みながら振り向くリディ。その顔を見てサクラとモモが少し後退りをした
「お前のせいだからな!」
「えっ……。ご、ごめんなさい……」
何が起きたか分からないサクラが謝ると、その側でウロウロ浮かぶモモをリディがガシッとつかんだ
「おいモモ!お前も何をしたんだ」
「待って、モモは何もしない……」
モモを激しく上下に動かすリディをサクラが慌てて止めると、またキツく睨まれ一瞬怯んでいると、モモが二人のやり取りの間にリディの手から離れ慌てるようにサクラの背中に隠れた
「ここら辺にはまだ敵が多くいるはず。ノイズとノオトは大丈夫でも、お前が邪魔だ」
モモの動きを見てため息混じりにリディが言うと、林から離れるように歩きはじめた
「行くぞ」
「えっ、どこに……」
どんどん歩き進めるリディに置いていかれないように追いかけるサクラ。瓦礫が重なり少し高くなった場所でリディが立ち止まりサクラを見下ろしながら答えた
「ソナタさん達のところだ。モモについて調べてもらうからな」
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