第34話 現れ消えたその影に

「えっ、なにこれ……」

 家から出た後、すぐにノオトが手伝いに行った場所に着いたノイズは、目の前に広がる光景に呆然としていた。住宅街から少し離れた森に近いのんびりとした場所が、あちらこちらに木々は倒れ、所々に建っていた建物も崩れていた

「ノオト!メメ!いないの?!」

 近くの木や建物に、もたれかかって休んでいた人達に声をかけながらノオトを探す。すると、倒れた人達がいる場所から少し離れ所に崩れそうな建物にもたれ座るノオトを見つけた

「ノオト!大丈夫?」

 慌てて駆け寄り目を閉じ動かないノオトをユラユラと体を揺らすと、ノオトがゆっくりと目を開けノイズを見た

「今すぐ医療班を呼ぶから!」

 ノオトの様子を見て、ノイズの右手に小さな本が現れページがめくられる。だが、医療班を呼ぶのを止めるように、ノオトがノイズの右手をガシッとつかんだ

「ノイズ、サクラは?」

「えっ、サクラは……」

 ノオトの問いかけに答えられずにいると、ふわっと風が吹いた。風が吹いた方に振り向くと、大勢の人達がノイズとノオトに向かって来ていた。すぐに逃げようとしたがノオトと一緒には出来ず、攻撃を防ごうと左手を伸ばしたその時、向かって来ていた人達が突然、声を上げノイズ達から離れるように後ろに吹っ飛ばされた


「危なかったですね!みなさん、大丈夫でしたか?」 

 ノイズの前にオンプが声をかける。いつの間にか二人の周りには救助に来た人達で溢れていた

「ありがとう、助かったよ」

「ここは私達に任せて施設に戻って治療を受けてきてください。話は後程、お聞きしますから」

「わかった。ノオト、行こう」

 そう言うと、ノオトの体を支えながらおんぶをすると、空をふわりと飛んで施設に戻っていく。地面を見ると、倒れていた人達の救護のために、更に多くの人達が来ていた






「モモ、ここにいるの?」

 その頃、真っ暗な視界に現れた光のすぐ隣まで来たサクラが、光の中に向かって恐る恐るモモに話しかけていた。だが、変わらずモモからの返事はなく、かわりにまた光の中から唄声が聞こえてきた

「この唄、聞いたことある……」

 恐る恐る光の中を見て、一歩光の中に足を踏み入れ、辺りを見渡す。暗闇から一転して真っ白な視界の中、サクラから少し離れた場所に人のような影が見えて恐る恐るその影の方に近づいていくと、聞こえる唄声が少しずつ大きく聞こえてきた

「……ノイズ?」

 唄い続けるその影に話しかけてみる。すると、唄がピタリと止まりサクラが少し後退りをした。振り向くこともなくその影は光の中に消えるように、うっすらと見えなくなっていき、影が消えると、その足元に一冊の本が落ちていた

「モモとは違う本かな」

 残された本を手に取った瞬間、突然グラッと眩暈が起き、その眩暈に耐えきれず目を閉じ倒れてしまった





「あら、自力で戻ってきたの?」

「この子の術みたいだったから、その可能ではあるけれど……」

 困った顔で話すソナタとリリの前には、サクラが本を抱きしめ倒れている。話し合いの途中に、突然現れたサクラに驚く家政婦達とは対象的にソナタがサクラの体を触り揺らして起こそうとしている

「サクラちゃん、大丈夫?」

 何度か声をかけても目を覚まさないサクラにソナタがまた困った顔をして、リリと顔を見合わせた

「力を使いすぎたのね。この部屋で少し休ませましょうか」

 ソナタがそう言うとサクラかの体がふわりと浮かび部屋にあるベッドへと移動していく。家政婦達が布団を動かしサクラを寝かし直すとベッドの周りに

、サクラに触れられないように結界を張った

「せっかく他の部屋に結界も張っていたのに勿体ないわね」

 と、リリがため息混じりに言うと、その言葉にソナタがくるりとリリの方に振り向いて不適にクスッと微笑んだ

「その結界もサクラちゃんに打ち破れていたんでしょ?リリにも修行がいるわね」

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