第14話 雨を止めるために
「すごい……」
食堂に案内されたサクラが、食堂を見てその広さと用意された食事の多さに呆気に取られ、入り口に立ったまま動かず、食堂の中を見渡している
「サクラさん。どうぞこちらに」
食堂に先に来ていた家政婦がサクラのために用意した椅子に案内する。長いテーブルの側を歩き、用意された見たことのない料理から美味しそうな匂いがして椅子に着く前に立ち止まり、料理に見とれてまた動かなくなったサクラを見て、家政婦達がクスッと微笑み話しかける
「サクラさん、先に食べられますか?」
「すぐに戻るとは言っていましたが、少し遅くなるかもしれませんし、ご飯が冷める前に食べませんか?」
家政婦達にそう言われ、少し恥ずかしそうに目の前のご飯から視線を外し、サクラの後ろにある大きな窓を見た
「……そうですね、冷める前に食べた方が良いですよね」
そういうと、サクラのために用意された椅子に座ると、家政婦が暖かいスープをテーブルに置いた
「ねえノオト。この雨を止めるには、どんな唄が似合うと思う?」
「さぁね。どんな唄でもいいんじゃない?」
この頃、ノイズの家の屋上では、ノイズが雨が降る空を見上げノオトに問いかけていた
「こんな雨、誰の仕業なの?」
雨が頭に当たり不機嫌なメメがノイズに問いかけると、ノイズがクスクスと笑ってノオトに傘を差し出した
「たぶん、サクラと思うよ」
「サクラが?なんで?」
傘を広げながら、ノオトが不思議そうに聞き返した
「サクラは雨が好きなんじゃない?本を渡した時も雨が降っていたよ」
ノイズの言葉に ノオトが少し呆れた顔をして、メメはノオトの肩に乗り、濡れた頭を撫でて乾かそうとしている
「好きかはどうかは違うとは思うけど、とりあえずこの雨はどうする?」
「どうするって、術を止めるのは大体一つしかないでしょ」
「サクラを倒すの?」
「そんなこと出来ないでしょ」
「じゃあ、どうする?」
そうノオトが問いかけると、ノイズがニコッとノオトに微笑んだ
「モモ、おいで」
そうノイズが言うと、目の前に小さな光が現れて、サクラと一緒にいたはずのモモが、ノイズの傘の中に現れ、雨に濡れないようにジタバタと動き出した
「サクラはご飯食べている?」
騒ぐモモを抱きしめながら話しかけると、雨に濡れないことに気づいたモモが落ち着いたのか問いかけに答えるように少し本を開いた
「そっか。それじゃあモモ、ちょこっと力貸してね」
「使えるの?」
「まだ私の本だよ。サクラにはまだ貸しているだけ」
ノオトにそう返事をすると、モモがノイズから離れ、手のひらの上にモモがふわりと浮かび、ページがめくられて、小さな光の粒が一つ現れた
「モモ。急いでこの雨を止めて」
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