第13話 怪しい雲行き
「ノオトさん、お疲れ様です」
「助かりました。ありがとうございます」
そのころ、仕事を一通り終え、空に浮かんだままふぅ。とため息をついて休んでいたノオトの所に、少し顔に傷をつけた女の子が二人やってきて、ノオトにペコリと頭を下げた
「皆が無事で良かった。怪我をした人は?」
「医療班が手当てしています。みんな擦り傷程度だそうです」
「そう、良かった」
二人の報告に、ニコッと微笑み返事をするノオトに、少し顔を赤らめながら報告に来た二人が見ていると、ノオトが二人の顔の傷に気づき二人の頬にそっと触れ、少し申し訳なさそうに見ていると二人の耳が真っ赤に染まった
「悪いけれど、報告はお願いしていいかしら?」
「はひっ!もちろんです!」
少し声が裏返りつつ二人同時にノオトに返事をした。それを聞いてメメがクスッと笑っている
「じゃあ私は行くわ。みんなも遅くなる前に帰るようにね」
「はい!ありがとうございます」
ペコリとノオトにまた頭を下げて、声を高く騒ぎながらノオトから離れると、あっという間に何処かへと行ってしまった
「メメ、どう思う?」
二人の姿が消えたのを見届けると、メメに問いかけると、微笑んでいたメメの表情が険しくなった
「強いわね。日に日に強くなりすぎている」
「高度魔術者が集まってきているというのは?」
「そうかもしれないけれど、術は強くとも魔力が足りない戦い方なのよね。今はノオトやノイズがどうにか出来ても、すぐに勝てなくなる」
「ノイズの両親に話は?」
「さぁね、今は聞いても無駄って感じ」
そう言うとノオトの肩に乗り、ふぅ。とため息をついた
「仕方ないわ。あちらとて上手く言えないのでしょうね」
尻尾を大きく降り言うメメに、ノオトがそっと頭を撫でた
「サクラは、どうする?」
「それはノイズとあの子次第としかいえないわね」
頭を撫でられ嬉しそうに喉を鳴らしながら答えるメメに、ノオトがクスッと笑う
「じやあ、サクラがモモと名付けたのは?」
「さぁね」
「ノイズが持った一番最初の本がモモというのは……」
「さすがに知らないでしょ。偶然よ」
「偶然ね……」
と、メメの言葉を呟くように言い返したノオト。するとまたどこかで誰かが術を使い荒れている音が聞こえてきた
「……ノイズの家に行こう。そろそろ夕御飯の準備が出来ていると思うから」
「そうね、ここにいたらまた呼ばれちゃうものね」
メメも音がする方を見ながら言うと、ノオトは音から離れるようにノイズの家へと飛んで向かった
「モモ、ちょっと濡れちゃった?」
雨から避難した後、ノイズの部屋から出て用意してもらった部屋に一人戻ってきたサクラは、ずっと部屋の中をウロウロと動き回るモモを捕まえ、ページをめくったり表紙を見て、濡れているか確認していた。細かくモモを見て、どこも濡れていないのを確認し終えると、ふぅ。と安堵すると、モモがふわりと浮かんで窓の側に飛んでいった
「雨、止まないね」
ベランダから戻ってきた時よりも、雨は強く空はだいぶ暗くなっていた。雨粒の間から見える空を見ていると、サクラがふと不思議に思い首をかしげた
「あれ、ここだけ雨が降っている?」
そう思い窓をほんの少し開けようと窓に手を掛けたその時、コンコンと扉を叩く音と共にガチャと扉が開く音が聞こえ、ノイズが部屋の中に入ってきた
「サクラ、ご飯だよ。ノオトとメメも、もうすぐ来るっていうから、一緒に食堂行こう」
「う、うん……」
返事をしながら窓を見るサクラ。それを見てノイズも窓の方に歩いていく
「どうしたの?」
「何か変な感じ……」
そうサクラが空を見上げながら言うとノイズも空を見る
「雨が降ったからじゃない?」
「そうかなぁ……」
ノイズにそう言われても釈然としないサクラは空を見て悩みはじめた。ノイズもまだ空を見上げていると、二人を呼びに来た家政婦達がコンコンと扉を叩いた
「ちょうど良かった。一緒に食堂行ってて」
「えっ、でも……」
廊下にいる家政婦達の方にサクラを背中から押し進めるノイズに戸惑うサクラ。モモや家政婦達も戸惑ったようにノイズを見ている。その間に、サクラを部屋の外に出したノイズが、そーっと部屋の扉を閉じながらサクラにエヘヘと笑って話しかけた
「ちょっと忘れ物を取りに行くからさ。大丈夫、すぐ戻るよ。モモ、サクラと一緒にいてね」
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