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この星に人間が移住してきてから五百年が経とうとしているだろうか。
人間のせいで人間を含めた多くの生物が住めない環境になった地球を捨て、人間は宇宙へと旅立った。
移民船の準備が整うまでの待機場所であるシェルターにも、移民船にも、収容人数には限りがある。水も食糧も限りがある。先の短い人間に限りある資源を分け与えるだけの余裕はなかった。
だから、寿命が迫っていることを知らせる機能を遺伝子に埋め込んだ。
今よりもずっと発達した技術を持っていた当時でも正確にわかる寿命は残り一年からだったらしい。
以来、体の寿命が残り一年になると左腕に数字が現れるようになった。
数字が現れた人間はシェルターを追い出され、移民船の乗船権利を奪われ、移民船のダストシュートから宇宙へと放り出された。
人間を含めた地球に暮らす多くの生物を犠牲にして、ようやく俺たちの祖先はこの星にたどり着いたのだ。
地球にあった土地の名前をこの星のあちこちに付けたのは郷愁の念からか。漢字の読み方に誤りがあるのではないかという説が出てきているそうだけど今さらだ。
船で宇宙をさまよっていた頃に多くの知識や技術、言語が失われてしまった。本やデータは残っていても読めないもの、読みとけなくなってしまったものがかなりある。
この星にたどり着いて、水や食料、あらゆる資源の供給も安定して、寿命を知る必要はなくなったけれど、左腕の数字を消す技術もまたとっくの昔に失われてしまった。
俺の左腕に数字が現れたのは半年前のことだ。
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