54 龍眼公主のデザートたち
ダブソスの王城の
しかし、さすがの
「甥っ子の中では、シドゥルグ、おまえがいちばんだ」
昔から、かわいがってくれる叔母であったが。
叔母といっても美魔女だ。小国の国家予算規模で美容に金をかけた結果だ。
(現帝もドルジも、きっと食われたな。この叔母に)
そこそこの時点で、それには気がついていたが。
「現帝のオトコとしての誇りを、ぽっきり折ったのは
「……折るなどと。あれは最初から問題にならなかった」
「
「……代わりは、いくらでもいる」
女は長い爪を下になった男の敏感な部分に這わせた。それでもって、
「……わたしか。おまえか。おまえの子、ナラントゥヤでも」
(ドルジは入れてもらえてもないぞ)
反目し合ったわけではない。策として
「男子しか帝になれぬと、そんなことを言うておるから絶えるのじゃ。絶えてしまえばよい。
女の動きが激しくなって、(その前に、わたしがっ、絶え……)、
そして夜明け前に、ダブソスの
心地よい疲れどころではない。
何から何まで
だが、こんな毎日が続けば確実に早死にする気がしてきた。
(現帝が子をなさぬままならば、帝位はどこへ転がり込むか。叔母上は、そんな昔から画策していたんだな)
王城の一角の館に、
連れて来た兵士とともに逗留している。
「
兵士長が待っていた。
「起きていたのか」
兵士長は、巡察団が起ち上げられた初期メンバーだ。
「いささか……。
兵士長は最近、白髪が目立ちはじめた。
「
「うむ、まぁ」
反論はできないと、
「
「そうか」
この兵士長は、間諜の
「わたしは、わたしの
「そうだな」
「それから、
「ほぅ」
「おそらくは、
「はっきりと謀反の証拠もなしに、わたしを引っ立てるわけにはいくまい?」
「だからこその使節団なのかと」
「使節団の面子は、いかに」
「シャタル帝
「その名は覚えがある。たしか属国から留学というていで、人質に送られてきたドホの第4王子だったな」
「庶子ということもあって、もとより故国に居場所はなかったのでしょう。
「話せばわかりそうな男か」
「それは、話してみないことには何とも」
「話してみよう」
前向きなのが
さて、
外海に通じる湾に、明け方の光が満たされはじめた。
高い塔からは海が見える。
ダブソスの実質の主人たる
そばの小机には濃度高め、苦い薬草を果汁の甘さでゆるめた、朝のお決まりの
近習の女官は、密偵からの書状を読み上げた。
「随行メンバーの護衛は第
「ほぅ。おだやかではない。
「野外活動に慣れた隊であるのかと」
「して、フフー・チューランとは、どんな男だ」
「
「文官だな」
「あとは、じかに、イヴは御報告申し上げると」
「報告を楽しみに待とう」
世の中を引っ搔き回すのが、何よりの好物なのだ。この女は。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます