55 追いはぎ捕りが追いはぎに
どこぞと、どこぞの
「ダブソスまでは街道を一直線です」
そも、ダブソスへ公主が降嫁する際、開通した公主街道だ。直進性にこだわり、両側に側溝を従えた路面の幅は、大人が
今日も早朝から一行は、無理のない行程で移動していた。
早めに行動し、早めに休む、
たまたま、巡礼の尼さまと楽師兄妹が旅の道連れになったという3人の初期設定は今のところ、守られている。
尼さまは、墨染めの衣の尼さまのまま。
「タワシがダブソスを向けば、尾は
「ほーっ、ほっほ」
それでも尼さまは笑うから、飼葉を得た馬のごとく、
その
「はァ、こんきィ、こんきィ」(あぁ、根気のいることだー、いることだー)
「ほーっ、ほっほ」
尼さまの笑い声が、晴れた空に響く。
しばらく行ったところで、
「また標的にされたっぽい」
彼女の危険予知センサーは鋭い。
前方の悪意を見逃さなかった。治安がよいはずの街道沿いでも旅の者を狙うごろつきは、どこにでもいた。
前方の道幅いっぱいに見るからに、かったるそうに歩いてくる、黒光りした肌の男たちの集団があった。
「7人ですか」
すかさず、
ひょろ長いの、ガタイのよいの、いろいろな体型の男たちが、
「漫画だったら、
みな忘れかけているが、
モブ男どもは、にやにやと笑いながら
「ずいぶん立派なお馬さまだなぁ。ちょっと、貸してもらおうか」
この場合の、「貸して」は戻ってこない。
モブ男たちの中央にいる男は、大振りな刀の
「ケガしたくなかったら、金目のものを置いて行きな!」
〈システム〉で
「こりゃ、上玉じゃないか!」
男のひとりが、馬に乗った
「
別の男が、尼さまと真白月を指さして笑った。
「追いはぎ家業って、
「『どうして追いはぎをするの?』、『そこに無防備な旅人がいるからサ』。『こんな朝から⁉』、『そんなこた知ったこっちゃない。オレが追いはぐと決めたら、追いはぎ
「ほーっ、ほっほ」
また、ひときわ高く尼さまが笑った。
「……」
モブ男たちは、出鼻をくじかれたように固まった。
それに、すでに、しゃべれなくなっている者もいた。
あっという間に、灰色の長衣をなびかせ、男にしてはうつくしい、女にしては低い声の銀の髪、
「一歩でも動いてみろ。その喉元、かっ切る」
モブ男のひとりは馬上から、ひらりと舞いあがった
「この土地の
それぞれの小国の端などは、やはり
襲われる理由は、真白月側にあった。でも、それは、「いじめられる側にも原因があるんじゃないの」というぐらい理不尽だと思う。
尼さまの笑い声がカン高くて、存在を気づかれやすい。
なんだか、その馬、でかくありませんか、だの。
とにかく、目立ちすぎた。
それから、〈システム〉でつちかわれた、
剣術と体術を人相手に実行する機会だった。そして、手加減を学んだ。
今までの練習相手が
思えば
「さぁ! このあたりで、いちばんうまい店に連れてってもらおうか!」
真白月は、仁王立ちで言い放った。
「
追いはぎの中でも下っ端と思われる者が、脚を
悟りを開いたと思えぬ形相で、尼さまは、地面をはいずる下っ端を追いかけていた。
さっき、「ばばあと、
「尼さま、そのくらいで勘弁してあげてください」
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