46 日女、夜逃げする
「新月の晩だ。いつの間にか
「心残りはないのですか、
「あぁ。ブグンが用意してくれただろう献立は、明日は何だったかな!」
「そこかい!」
「トゥヤは
少し涼しくなった夜風に、
「でも、
「……やめてくださぃ」
神官騎士は消え入りそうな声で懇願した。言うなれば、この神官騎士は月の
彼らは内門、中門、外門と正規のルートを抜けていく。
ただ、途中から、もうひとつ、馬のひづめの音が追いかけてきていた。
「誰かついてくる。ウっとおシ」
「モちょっと先に行ったラ、ケ散らス」
そろそろ郊外で民家もない。
「若い走りダ。一人」
「……あぁっ、もうっ。馬、つぶれちまうっ」
聞き覚えのある、軽い調子の声がした。
「神官騎士殿っ。すんごい馬ですね。やっぱし」
エルヘス・タショールだった。
「――今夜、
「いや。遠乗りじゃないし」
「あれ?
エルメスは、やっと気がついたようだ。
「わわわ。もしかして、駆け落ちってやつ⁉」
「ちがいますから!」
「人呼んで、『
「
「……馬」
エルヘス・タショールという男子は、意外と肝が据わっていた。
「いいなぁ。しゃべれるんだ」
それか、変わり者だ。
「見なかったことに。聞かなかったことにして、お戻りください」
「あぁ! でも、このまま、月の
エルヘス、帰る気なし。
「せめて、どこに行かれるのか教えていただきたい」
「実家です」
「そうですか。求婚者としては、実家の方々に御挨拶しておきたかったなー」
「その話はなしになったはずだが? わたしが勝ったろう?」
「あのときも言いました。あれはフェアじゃない」
「ケンカはやめて? 今度の手合わせがあれば、エルヘス君を応援するから」
「いや。マジ、あの応援だけはカンベンしてください」
「軽いエルヘス君が、ここだけ真顔で!」
「もう、都へは戻らないつもりですか」
「後宮に入らないでいいのなら、考える」
「じゃあ、その旨は、わたしが関係部署に伝えておきますよ。――わたしの姉も後宮に入っているから、わかるけど。たしかに自由はないしね」
「あ。タショール妃」
「えぇ。もうしばらく、会ってないな。後宮は、そんなところですからね」
「デハ。さらだじゃ」
最後は
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