44 シャタル、ぱぱと呼ばれる
結果、「はしゃぎ過ぎ」という
軽く一週間、
すみやかに、その隣りに布留音と馬の待機場所が設けられる。
そして、甘やかされている。
(ミカンの薄皮までむくのは、どうかと思うぞ)
「この
「おいしい!」
「イメールって、誰だっけ?」
「
「あ。あの人か」
「最初にどついたら、すごく、びっくりしてたね~」
「そりゃ、そうだろ!」
脇からユスは言ってしまった。
「あ、ユス先生。トゥヤはどうしてるの?」
「学舎で勉強がはじまった。落ち着いたら連れてくるよ」
そうだ。トゥヤは学舎の学生となったのだ。すると、もう、
「――わ、たしも、どっか、
「何を言っておる。おまえのことは後宮が引き受けると申し出て来たぞ」
シャタルが休養室の入り口に立っていた。
「帝のお越しでございます」
うしろにブグンが控えていた。
「どうだ。具合は」
帝の側に籐で編まれた椅子と丸テーブルが、召使いの手によって運び込まれてくる。
瞬く間に、丸テーブルに軽食の用意がなされた。
こういうときは使役コンピュータでなく、人力というところが、この世界の文明だ。
帝は今日の
「
今日の茶の供は、笹の葉に包んで蒸した
「おありがたい」
(そうか。この人のところへいれば、食いっぱぐれないんだよなぁ)
(この人。性格はどうかなって思うけど、けいざいりょくはある。……なんてったっけかな。こういう人のこと)
「……ぱ、ぱ」
小さく、つぶやいてみた。
「ん?」
シャタルは
「ぱぱ」
〈ぱぱ〉とは古代語だった。いくつかの古代語は、この大陸で現在も意味が通じる。〈ぱぱ〉は、その中の言葉の一つだ。〈父親〉を示す最高鋒の敬称だ。
「い、今、われのことを、何と」
「ぱぱ」
真白月は、シャタルをみつめて、もう一度、繰り返した。
「――なんだか、胸が、ぎゅっとしたぞ。なんだ。この感情は」
シャタルの胸が波打つ。
「それは父性の目覚めというものかも知れませんな」
ブグンが解説した。
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