41 お手合わせ願います
抜きんでた才能が認められれば、特例が認められることもあった。文官であったユス・トゥルフールが第
「日曜日の部下主催の親善対抗試合に、帝が、お運びになるというぞっ! どういうことだっ!」
公休の週末にもかかわらぬ
「楽しそうな催しじゃな。観に行く」
そう、帝がのたまわったそうだ。
実は
そこに滞在する者たちが内密に事を進めていようが、大体のことは筒抜けになる。
今回は
「試合は、どのようになっておる!」
「エルヘス・タショールの人選に任せておりました。おそらく、若い者で選手を組んだかと。対する辺境の大将が、12歳の
「あとの
「〈
「どうした?」
「ユス・トゥルフールとあります」
中佐が手元の資料を見て、ふるえた。
「ユス・トゥルフール大尉! 彼が辺境組に、なぜ入っている!」
大佐も声がふるえてしまった。
「そういえば、彼は公子の家庭教師でした……」
「まずい……。若い者が、トゥルフールに勝てるわけがない」
「は、はい」
「たかが若い者の親善試合と言えど、帝の前で
「はい」
「急ぎ、選手を選抜し直せ」
「はいっ」
中佐は
そして、日曜日。夜更けではないが夜明けでもない、とんでもない時間に
「お招きいただきありがとうございます。
「コンビ名みたくなったね」
「あとは、〈
「オレは入れるな」
間髪入れず、ユスが否定する。
(あ。感じ
(ふふ)
二人が間借りしている共同住宅に、
これで辺境チームは6人。もちろん、
「どうする? 勝ってもいいの?」
「いいや」
「手の内を見せるな」
「ふーん。朝飯前のひと運動ってわけかぁ」
「
「むむ」
二人ともが何とも言えぬ顔をしたので、
「……不安か?」
「いや……。
「実戦はしたことがないということなので、補佐してやってくれ」
「もちろんです。こんなことなら、里の〈ほーむすてぃ〉で
彼女らの得意とするのは棒術だ。しかし、今日は剣を使う。
「親善試合ですから真剣ではないのでしょう?」
「
「重さがない分、楽でしょうけど勝手がちがってきますね」
辺境チームは、すでに訓練場に入っている。
「学舎の剣術指南は
ユスは名ばかりの
「学舎と
トゥヤが、そうされると示唆している。
順当に行けば、トゥヤは帝近くに配置されるのだろう。それか、父親と同じく辺境に飛ばされるかだ。
「さてと。
ユスは
「ナラントゥヤさまに
大将だが年少のトゥヤを一番手にする。
「わたしは、あのタショールの若君にあたりますよ。約束ですから。
「
ユスは不安しかない。
「
「3人がかりか。相手に同情するよ」
「あとは――、ユス先生、お願いします」
「人使い、荒い……」
「疲れたら、交代するよー」
「ただし手加減できないけどー」
「コワっ」
「ナグヤさん、ニキさん。素振り、見てくださーい」
今日は、男子のSSサイズの生成りの訓練着を用意してもらったいた。そして、目元だけかくす薄桃色のハーフマスクをつけている。
キィキィのお手製なる、それを真白月は、いたく気に入っている。
今日も都合がつけば、キィキィは観に来たいと言っていた。後宮に入れる年間パスを持っているので、訓練場も入れるかもしれないと言っていた。
そのことは、さして重要ではない。
「サイズ的には、そうなるか」
いたしかたない。
「ハンデもらったほうがよくない?」
「相手より長いの持った方が突けるよ」
「突く」
「そう。突いて」
木刀を持った右手を前に出す。
「これで、一本とれる。
「だよね。
「
「そうだよ」
「おはようございます。トゥルフール大尉。
見た顔が近づいてきた。
エルヘス・タショールだ。
「こんな早起きなんですか。〈
「日が昇り切ったら暑すぎるだろ」
まだ
「それが、帝が試合見学にいらっしゃるとか」
「……うわ、それでか。なんか、
訓練場に併設された長屋に、人が出たり入ったりするのが見えていた。
「わたしの個人的なお楽しみだったはずなんですが、なんだか
「いっ。何、考えてんだよ」
ユスが目をむいた。
「上から言われて……。仕方なくですよ?」
「こっち、ハンデあるんだよ。6人しかいないし、ひとりは
「ひっ、
「そこは、まぁ、
「
「よっしゃ」
「それじゃ、帝がお越しになったら試合開始です」
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