42 観覧試合
帝も
ほぼ日の出とともに、帝と、その供の者たちは
帝は
「わぁ。来たんだ」
「そんな迷惑そうに言わない」
トゥヤに、たしなめられた。
「――練習試合に使用する武器は片手模擬剣、両手模擬剣、または木製の長柄。それぞれ得意とするものを、ひとつとします」
3人の審判のうち、ひとりが説明をはじめた。
用意してある模擬剣は片手剣、両手剣とともに、全長95センチ、刃渡り8センチほどだ。長柄は1メートルほどの木棒である。
そして、主審には選手名を墨書きした紙が、それぞれの大将から差し出された。
辺境チームの大将はトゥヤ。
「では、はじめる」
審判の合図で、それぞれの一番手が前に進み出る。
こちらからは、トゥヤが。
あちらからは、上背のある男が出て来た。
「げ。教練補助指南出してきた」
ユスがうなった。
「おじさんですね」
「たしかにだよ。12歳の少年に補助指南、当ててくるたぁ、えげつな」
ユスが、もう人相悪くなっている。
向かい合った二人は生成りの訓練着の上に胴着と、すね当てをつけている。
首、目、頭を狙うのは禁止だ。防具は、それぞれに任されている。ただし、装着し過ぎると動けなくなる。だから、たいてい最小限にしか、皆、防具は付けない。実戦とすれば、防具の重さに耐えることも必要になるのだが。
トゥヤと学舎教練の男との試合は、力の差は歴然としていた。トゥヤの剣は余裕で受け止められてしまう。男は自分からは仕掛けない。トゥヤに打ち込ませて、それを受けるのみ。
「いや、よく続くよ。いたぶってんじゃないか」
ユスがいらつきはじめる。
もう10分、それが続いている。そろそろ時間切れで引き分けとなる。
トゥヤの息が切れて、剣先が甘くなった頃、相手が攻撃に転じた。
脇を一本。
肩を一本。
二本先取したほうが勝ちだ。
トゥヤは
「すみません。負けてしまいました」
「お疲れ。よくやったよ」
ユスが
「じゃ、次、オレ、行かせて? 同点に持ち込んどきたい」
「わたしでは負けるとでも?」
「いや。おまえはエルヘスと手合わせなんだから。見せてやってよ。〈
あちらからは、ユスよりは年上と思える男が出て来た。
あっという間に、ユスが二本先取して帰って来た。
「まいていこう」
それを見て
「よろしくお願いします」
エルヘスは、にっこり笑った。
試合がはじまる。
エルヘスは両刃の模擬剣、布留音は片刃の模擬剣を手に取った。
(へぇ。めずらし)
エルヘスは、
対する
双方、力で押すのではない。まるで、舞踏のような動きで、相手の剣をかわしていく。
(これは。本気出さないと負けるかも)
エルヘスは、ちょっと楽しくなって、うすく笑った。
それが、
「わぁ」
辺りから熱いため息がもれた。
「
そのとき、いきなり、
「パワ~~~!」
「あの声援で、がんばれるのか……」
「愛だね」
ユスとトゥヤが引き気味だ。
あわてたのは、
「がっ、がんばれっ。タショール君っ」
「エルヘスっ!」
無難な応援をはじめる。
「ヘイヘイ! キレてる! キレてる! 仕上がってるよ~!」
しかし、
(どこの国の応援の仕方?)
(たぶん遠い国)
「伝家の宝刀~! 抜きます~抜きます~!」
妙な振り付けまで混じりはじめた。
「うっ」
エルヘスの
お辞儀をしてから、エルヘスは
「ありがとうございました」
「こちらこそ」
「
そうして、エルヘスは
「面目なーい。負けた!
「いや。逆に、あれ聞いて、よく耐えたな」
「すげぇ精神攻撃だ」
「次、ホランでいいだろ。そろそろ
エルメスが振り向いたのは、静かに座っているホラン・イメールだ。
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