40 所長はカン違いする
「それで、どうして、〈辺境の新参者 VS
トゥヤは、わけがわからないという顔で聞いてきた。
それは、そうだと
置き畳の部屋では栗の木の丸い座卓を囲んで、また作戦会議がなされている。
「ユス先生が考古学者だって、ほとんど忘れてた」
「うん。ぼくもだ。それに
先日、
「そりゃ、おもしろい」と
すると、話が大きくなった。
もはや、イベントになってしまった。
「どう数えても、辺境チームが人材不足でしょ」
トゥヤを大将とし、
「3人しかいない」
そこに、遠慮がちに
「わ、たしも、やる」
「へっ」「えっ」
トゥヤと
「一応、システムで武術は学習した」
したのだ。
「仮想体験だよね。
「だけど。だから。この機会に、実際、やってみたいかなって」
「たしかに護身術くらいは、
「あと、助っ人のあて、あるよ?」
「ニキとナグヤ。彼女たち、強いでしょ」
さて、ユスであるが。
本日は久方ぶりの本来の仕事だ。
古代文明研究所は大学舎の一角にある。だが、何のための建物か知らぬ者さえいる。現帝の道楽と陰で言われている部署だ。
大陸から集まりつつある資料を保存し、編さんしていくのが、この研究所の役割。研究員は大陸の各地に散っていて、報告にしか、この建屋には寄らない。
故に、ここには非常勤の職員と所長しかいないのだ。
「ごくろうさん」
所長が、資料で埋め尽くされた机から顔をあげた。
また資料に没頭して家には帰らなかったのだろう。無精ひげが伸びたままだ。
「ひっさしぶりだねぇ。トゥルフール君」
「まぁ、そうですよ」
「今回は
「はい。所長が目がつけていた
「出たか」
「その言い方が適するかはわかりませんが、出ました。詳しくは、この報告書にて」
ユスは、ここ何か月かのことを記した報告書を、所長の机の上の資料の山の
「つきましては、所長に会わせたい人がいるんです」
「そうか」
所長が、そう大きくもない目を見開いた。
「いつだ。日を空けておく」
「来週の週末はどうですか。日曜日の早朝から
「スポーツ観戦が趣味なのか」
「行きがかり上、辺境組として駆り出されまして」
「いいところを見せたいわけだな」
「そんな気持ちはありません。長らく、わたしは訓練からは遠ざかっていますし」
「
「
「年は、いくつだ」
「14歳と言ってました」
「……ちょ、
所長が、うろたえた。
「ですが、これが、けっこうな耳年増でして」
「精神的には大人なので問題ないと? いやいや……」
所長は、なおも何か言いたげにユスを見たが、ちょうど非常勤の職員が、ぞろぞろと出勤してきたので、話は、そこで断ち切れた。
(――縁遠いと心配していたが、決めるときは早いなぁ。しかし、14歳か。いかんだろ。トゥルフールめ。なんてやつだ。合意があっても犯罪だ)
所長は完全にカン違いしている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます