17 異文化交流会
ユス先生が、〈
「
先程から
『 異文化交流会 』の一環。〈バターを作ろう〉だ。
「それゃ、痛み入りますね」
ユス先生が、へらっと笑っている。
そばで見ていた
「そうか」
(公子たちのことは、その、ユス何たらにまかせておけばいいのに)
(まぁ、
生活そのものが祈りになのだと言えば、そうかもしれないと納得しておく。
「先ほど細切れにした野菜を、バターで炒めます。岩塩少々を、お好みでふります」
里の者も加わって、主屋のつながった岩部屋では、いっせいに調理にかかる。
里の者たちは、皆、
「てへへ」
日光に当たり過ぎると、まだ、肌がぴりぴりするからベールはかかせない。プラス、ベールをかぶると謎めいた感が増す、と全員一致で賛同した。
たしかに、
そして、夜になると一部屋に
「スンブルの山が丘くらいのとき。スーンという海が池くらいのとき。ガルバラクチの樹が枝くらいのとき。宇宙や世界が卵くらいのとき――」
ユス先生が、お話をはじめた。
ユスが話したのは、
天帝にさらわれた姉をとりもどそうと冒険する、兄弟の話だ。
「――さて、この兄弟と、兄弟を助けた〈山かかえ〉、〈長うで〉、〈聞き耳〉、〈速足〉、〈飲みつくし〉の5人と姉さんが、空にのぼって
洞窟の外に出れば、本当に星空が広がっている。この夜のお話にふさわしいとユスは選んだのだろう。
「天帝は? どうなったの?」
ほおづえついた
「……最初に、おねえさんをさらったとき出てきただけで、あと、いっさい出てこなかった。おんなの敵」
知らねぇよ、とも言えず、ユスは教師らしく逆質問にした。
「
「そいつを地獄の
即答である。
「次は
トゥヤが、うながす。
「お話」
あの、とりすました
(絶対、絵本とか読み聞かせしたことないタイプだろ、こいつ)
ユスは言葉に出さず、にっこりと。
「ぜひ」
「――昔々」
「ひとりぼっちでお城に幽閉されている公子がいました。ある日、小さな子供が森の木の根っこにつまずいて、ひどいケガをしました。公子は子供を助けたかったけど、自分の力ではどうしようもありませんでした」
「そこで、公子は地下の国の女神に祈りました。子供を連れて行かないでくださいと。すると、地下の国の女神が現れて、おまえの血をすべて差し出せば子供を助けようと言いました。公子は、もはや自分の生きる意味も見出せぬ身。どうぞ、女神の御心のままにと、その血を差し出し地下の国へと下りました」
ろうそくの炎がゆらぐ。
「それは
ユスはたずねた。
「そんなところです」
※〈スンブルの山〉 世界の中心にあるとされた山
〈ガルバラクチの木〉 想像上の木
〈参考〉『古のモンゴル的宇宙観と霊魂観について』
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