18 乙女の旅立ち
「今夜、行われますのが女子の成人儀式です。乙女の旅立ちとも呼ばれます」
岩山に掘り抜かれた祭壇には泉の水を満たした、形の違う
先導役の女のうしろに、
その衣は、木の皮や植物をたたいて繊維を取り出し、細く細く糸にして、日にさらし、機で織り、それから、新緑の季節に滝つぼに行って水にさらして、緑の草の上で乾かした布で作られている。
(すると、たいようこうせんと、ようりょくそが、かがくはんのうを起こして、ましろの布になるんだっけ)
そのように、かくれ里の民は、いつ降臨するかもしれぬ
山の清水で
老女は、
「きっと、短い髪もお似合いなのでしょう。
小さな胸に、ただ
「お声も、月のかけらのようでございます」
何をしても
さて、ゆっくりと女たちは祭壇に近づいてくる。
進み出た
祭壇が一段高いので、
二つめの杯を
満々と水をはった杯は思ったより重かった。両手で差し出したら、よろけた。思わず、
(えらくあぶなっかしい感じ)
(ふふ)
姉妹は、また読唇術で話している。
そのまま、二人は夜明け前に後見人に伴われて旅立つ。
岩の城門のところまで無言のまま、
この儀式の間は、しゃべってはならない。受けた祝福が失せぬように、夜明けまでは話さない。
城門まで、
そのときは、ベールをたくし上げていた。夜だから、
(ニキ。ナグヤ。いらっしゃい。また、いつかね)
(え、うちらが読唇術使うの、わかってたんだ)
(さすがですわ。
姉妹は、(また、きっと)と旅立って行った。
(うわぁ。さびしい。さびしいな)
真白月は、きゅうぅ、とした。
見送る側になって、やっと真白月は、
(まさか、また、引戸のところで待ってはいないよね)
その
「夜も
「考古学者殿は、夜も探検ですか」
「そうですね。月の光に浮かび出る古代文字とかありそうで」
「何が狙いですか」
「何が、とは?」
ユスは、黒縁眼鏡の真ん中を左手の指であげた。
「かくれ里に来る道中も、目印になりそうな大木や大岩の位置を記録しておられた」
「学者の
「都の学者殿の興味を引くようなものが、このような
「いや、地下迷宮の日女とか、しゃべる女神像とか、
聞いた
「おっと。私は
ユスは笑顔を作った。
「我々は協力し合った方がよい。あなた方、
「あれは片目の一つくらいは、いただいてもよかった。
「敏感体質だな。今度、
「
「ユス先生。そこにいるの?」
部屋から寝ぼけた様子で、トゥヤが出てきた。
そこで、ユスと
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