19 赤金斧公ドルジは悩む
その頃、
『 叔父上へ
里の大切な儀式もあるそうです。ユス先生と一緒だから心配ないです。
3日で帰る予定。
父上が城に戻る前には帰ります―― 』
甥っ子の置手紙にも心臓、止まるかと思ったが、それはそれ。
問題の2通とは。
『
そして
わが兄上たちにおいては 御健勝か。
兄たちの働きで、属国の帝国への恭順も変わりない。
ただ、こう変わりがないと見過していることもあるやも知れぬ。
都への一時帰還の時期も近付いた。
土産話を楽しみにしている―― 』
要約すれば、このような内容だ。都の帝からの手紙だ。
そして、前帝の長女である
その国の国主は、2年ほど前に落馬事故で亡くなり、今は未亡人たる、その方が
『
そして
わが甥たちよ。息災か。
以前、こちらの地に立ち寄りし時より、だいぶの年月が立った。
また、こちらへ立ち寄りしときは歓待する。来い―― 』
そういう内容だ。国主たる未亡人は、シドゥルグとドルジには叔母にあたる。
(行間を読むと、こわいんだな。どっちの手紙も)
シドゥルグとドルジが、現帝の異母兄ならば、現帝と
この方は、
産まれたときに、
帝の始祖は海の龍神の御子という言い伝えだったから、龍の
しかし、前帝は世継ぎは男子という決まりを崩さなかった。
ただ、始祖と同じ
これにて、世継ぎ争いは決着したはずだが、現帝に世継ぎがいまだ産まれぬことで、さざなみがたちはじめた。
ドルジの眉間のしわが深くなる。
大陸の小国を前帝が武力多めの交渉で従え、まあまあ、のほほんと暮らせるようになったと思ったら、今度は内輪もめか?
(
兄、シドゥルグの意見を聞こう。どちらにつくかで、大きく未来が変わってしまう。
そして、かくれ里では
下り坂の帰り道は勢いがつき、行きより早足になる。
顔のベールをたくし上げた
「身体能力、高いな。
何でもないように言うのが、精いっぱいだ。
大岩に立っている
「降りてきてください」
ふんわりと降りる
「無茶なことはしないでください」
言葉に怒気が含まれている。
「ごめんなすって」
「わかってくだされば、よいのです」
己の腕から
(……ったぁっ)
見ている方が恥ずかしくなって、ユスは顔を背けた。
「ユス先生……」
横ではトゥヤが、打ちのめされている。
「トゥヤさま。あれはですな。神官騎士としての務めです」
(お役目以上)
「……、精進したいと思います。領主として、男として」
(がんばれー)
ユス先生は、教え子にエールを贈る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます