20 日女、帰還したい
その夜の
騎士団は久しぶりに全員がそろい、お互いの不在の間を埋めるのに忙しい。
もっぱらの注目は、公子の客人として紹介された山岳の民〈
風習でベールをすっぽりかぶっておられるが、うつくしいらしいと、兵士は浮き立っている。
(かくすことで、妄想が爆走している)
「月の
その言葉も、お付きの神官騎士が伝えるから、ありがたさ倍増。
騎士団への紹介ののち、
そして、
「
テーブルには、どーんと料理が積まれていた。
「皆に食べさせたくてね。諸国の名物を持ち帰ったよ。おススメは、非加熱の生ハムかな。干しイカも珍味だよ。――おや、ふるえておられる」
「私どもが怖いかな? かつての敵ともいえる我らのところへ来るのは、並々ならぬ御決意だったことでしょう」
崩れるように、
「トゥヤ、
そう言って
「公、下座ですよ、ここ」
ユスが、半分本気で迷惑そうに指摘する。
「いいんだ、いいんだ」
その息が酒臭い。
「もう、騎士たちと飲んじゃってますね」
「ところで、あれはあれなのか?」
「何ですか」
「トゥヤが、
「あー、結果的にはそうですか」
「月の
(こういうときの公は、何か企んでいる)
長い付き合いで、なんとなくユスはわかる。
「
トゥヤが、
(遠くない将来、まー、って呼び名にされそう)
「見たことない、ごちそうの山で鳥肌たった」
トゥヤにベールをくっつけて、小声で打ち明ける。
「あ、そうね」
「月の民との友好を願って、乾杯」
1時間ばかり、
外廊下を抜けて、最初に、この城に出た中庭を探す。
右の耳元、〈かぼちゃの馬〉につぶやくように思念を送る。
(帰還する。道筋を示せ)
視覚の奥で、きらめくような了解を受け取る。そのまま、中庭をめざそうとした時だ。
「まー、さま」
呼びかけられた。振り向くとユスがいた。
(まー、って呼んだね、今)
予想通りだ。
「どちらへ」
ナチュラルな笑みで聞いてくる。
「女子に、それを聞きますか。やんごとない用事です」
「遠慮しろ。異教徒」
いつの間にか
「公子のほうがよっぽど大人だ。
「じゃ、そーゆーことでっ」
最後まで聞かず、
「どどどど、ぅいぅ?」
「私は
「オレは、考古学の生き資料を観察する義務がある」
こいつら、まったく気が合わないくせに、こういうときだけ息、ぴったりだ。
勢いよく、二人を振りほどこうとして、ベールが足元にずり下がって落ちた。
(むかつく~)
しかめっ面の
「これか? 何か通信しているのか?」
「気をつけて。転送ポイントだからっ」
何に気をつけるのかは、
次の瞬間、白い光に包まれ——。
そして、3人は、〈四匹の力持ち〉=4つのアーチ門の
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