3 それは武闘会
兵は皆、白いジバン(じゅばん)の上に左前に合わせた薄墨色の長めの上衣を羽織っている。その袖から出たジバンの袖は、上着の袖の上にまくり上げてあった。その腰はベルトで締め帯刀している。それに革の
すれちがう者たちは大陸の各地から来ているのか。髪の色や着ている衣も多種多様だ。
あまり、しげしげとみつめると不審がられる。
白いジバン、地味な色目の上衣の左前なところは兵と同じ。それに、
彼女の顔立ちは、
満腹になり、ご機嫌になった
楽の音には軽快な太鼓の音も加わってきたから、ちょうどよかった。
大きな部屋への入り口と思える場所に着いたので、ぴょんと跳ねて中をうかがった。それが、尋常ではない跳躍だったことを誰も見ていなかった。
人垣の向こうには、舞っている女たちが見えた。
たたたた、とんか、とんか、とんか。
太鼓のリズムに合わせて、女が躍っていた。
顔にベールをつけた3人の
棒の演舞を披露していた。
右手に身長ほどの棒を持ち、くるくると回しながら自らも回転する。勢いをつけると腰にまいた飾り帯が舞い上がり、たっぷりした下履きをつけているにもかかわらず、観ている男たちから野太い歓声が上がった。
左右の女などは顔は隠しているのに、へその辺りは出している。
上座の銀の屏風の前に座っているのは、この城の
(思っていた
システムでは、おじさん参考画像はヒゲの濃いタイプをあげてあった。そこにいた男のほとんどが、それに当てはまり
統率のとれた舞の一挙手一投足に心とらわれていた。
女たちは、手の先から足の先まで優美だった。風にそよぐ
足先は、ふくらはぎまでの
真ん中の女が、いっとう背が高い。
3人は右手の棒を掲げ交差させ、反発したかのように勢いをつけて散ると、その、背の高い女が、ひらりと大きく一回転し、上座の前10
たん!
放ったと同時に、棒の先端で鋭い刃がむき出しになった。その
とっさに側近が自らの体を盾にし、刃先は側近の肩をかすめ、うしろの銀の屏風をつらぬいて倒した。
そのときには、演武の
「
上座の男が叫んだから、広間がどよめいた。
まず、兵が女たちに向かった。しかし、歯がたたない。
背の高い
棒、すでに刃先が出て
その線上に、
そして。
それをかわしたとき、長剣を持った
――
そう言った、ように思えた。
そのあとがわからないのは、つるつるした大理石の床の部分に、
受け身は取れたと思う。
床に打ち付けられる、と思った瞬間、誰かに抱きかかえられた。
そして、織地のソファクッションの上に連れて行かれた。
「大丈夫?」
少年が、
あの茶がちな髪の少年だ。瞳も茶水晶のようだった。
「君は誰?」
少年は、ささやいた。
「城の正門の入場者リストに、君らしき人の記録がない」
たしかに、
……。
そのとき、
『 夜明けまであと5分 』
「帰る!」
「だめだ!」
少年が、
「ごめんなすって!」
あとは、振り返らず走る。〈かぼちゃの馬車〉が誘導する地点へ。
風景を裏返したように、見覚えがある地下へ続く4つのアーチの門のある丸い部屋へ着いた。
(戻れた!)
そこから、
「おかえりなサィ~」
「もしかしたら、ずっと、ここにいたの」
「ヒトにとっての数時間は、タワシにとっては、数秒ほどでシかありまセ」
「ああ、でも――」
その
♪ あったらし~い あっさがきたぁ
「
その歌は古代の夜明けの唄だという。
起きる気が失せるのは、
そのまま、食事の間へ向かうことにする。
朝食はカップに
真白月は、城の
(絶対、あれ、また行く)
心に決めた。
その日、眠ると夢を見た。
ふりはらったと思ったら、それは
(――あんなに親切にしてもらったのに、突き飛ばしちゃうなんて)
最後に見た少年の見開いた目が、
(力加減はしたし、クッションの上に倒れこむように押したから、ケガはしていないはず)
次の新月の晩を待とう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます