28 これからどうなる
昼下がりの刻を、
さっき、館付きの召使いが茶を用意してくれた。
こういうとき、
置き畳の部屋には、栗の材を張り合わせた丸い座卓が置かれており、4人は、そこで一服しながら、これからのことを話し合った。
「ぼくは学び舎の寮に入ることになると思う」
トゥヤの予想だ。
都には貴族の子弟が学ぶ学舎があり、属国の子弟などが、その寮に入り学生としての生活を保証される。
「いずれは、その学び舎に入ったことだろうから。父上のことがなけりゃ、もっとのんびりした気分でいられたけど」
「わ、たしと
トゥヤの正面に座った
「
「女子学舎があったとしても、
トゥヤの右隣に座ったユスは即、却下だ。
「自覚ないのか。あんたは、この世界の
「おありがとぅ」
「ほめてない。それに女子学舎っつーか、女子の集まる場所は、たいてい男子禁制。裸族なんて、もってのほか。アヤシイ大人のおもちゃも、持ち込み禁止っ」
「そんなところへ、
ユスの正面に坐した
「こっちかラ、ごめんこうむりまスでっス、ヨ」
部屋の角から声もした。
「とにかく。帝の気分次第なんだから。おとなしくしておくこと」
ユスは
「帝って、気分屋さんなんですか」
「いや、それどころか勤勉な人だよ。辺境の領土の整備や、民の生活向上も気にかけている人だ。仕事は淡々とこなす。月曜日から金曜日まで猛烈に働いて、土日、趣味にいそしむタイプ。その興味は多岐に渡っていてね。国家予算を脅かすのかと思いきや、民の生活向上に役立つものに昇華していくという循環。だから、水路も浄化施設などの建設で、都の生活レベルは地方とは
帝の名はシャタルというらしい。
「えっ。すてきなおじさんじゃないですか」
「えっ。
帝は若く見える。
「ヒゲは濃くないけど、おにいさんではない」
真白月の〈おじさんセンサー〉の判断はヒゲだ。あと、すね毛。
「……オレ、は、どうなん?」
ユスは、恐る恐る聞いてみた。
「んー」
「その
「おにいさん!」
「おぉ」
ユスは思わず、ガッツポーズをしてしまった。
「
トゥヤが気を利かせた。
「
「わぁ」
ユスが、ひーひー、笑い出した。
「しかも、本人、まんざらでもない……。うれしそうじゃん……」それから、大真面目な顔に戻って、「とにかく。週末になったら帝は、この離宮にいらっしゃるから、粗相のないようにしろよ」と、注意された。
週末、ユスの言ったとおり、帝が
岸辺の館の船着き場に、
「何泳ぎで来たんだっけ?」
「気にするところ、ソコ?」と、
そうだ。
「心配だー」
「
そして、
小舟に乗るために船着き場に行くと、船頭ペアがいて、「へぇ。今日は神官騎士さまも舟で」と、わざわざ言う。
「ダメ?」
「奥働きの者が、こないだ、神官騎士さまのアレ、見損ねて、『見たかったァ』『また、泳いで来るんじゃね?』なんて、楽しみにしてましてね……」
「……置いてく?」
「容赦ないね」
トゥヤが止めたので、
さて、湖の中央の本殿、御座所に行くと、「白黒遊びをしよう」と、帝は遊ぶ気満々だった。
その一言で、侍従が二人がかりで重そうな大理石の
「白と黒に分かれて。表裏が白黒の、この石をじゃな。こうして」
帝は8かける8の方眼のマス目を書いた盤の中央の4マスの右上に、まず黒面を1個を置き、その隣には白面、その下には黒面、いちばん最初の黒面の下には白面石を置いた。
「はさむと自分の石の色にできる」
帝は黒面の石を打って、黒と黒で白をはさんでみせた。
「そら。白を打ってみろ」
「うー。これ、勝ったことない」
眉間にしわを寄せる
「ふふ。公子と二人がかりで来てもよいぞ。神官騎士殿は手出し無用」
先手を打たれた
で、
「なんと」
帝は絶句だ。
「はじめて勝った……!」
「まだ強いものがいるのか?」
帝は驚く。そこそこ帝は強いはずなのだ。
「
「ろく、とは誰ぞ。あ。神官騎士殿は口をはさむな」
「えーと、なんだろう。養い親? こわい、おねえさん?」
帝が納得していないのを見て、トゥヤが続けた。
「女神ですよ」
月曜日になり、帝はユス・トゥルフールを執務室に呼び出した。
「トゥルフール、おまえの報告は穴だらけじゃの」
右手の爪で黒檀の机をコツコツこづいている。不機嫌なときの癖だ。
「
「あー、
ユスの目が泳ぐ。
「
「……古代の女神の壁画などありまして。興味深い城です。詳しい調査はこれからです。現場に帰していただけると、次回、御報告もできることと」
「女神とは、原始宗教の神か」
「代々の
「あの
「はっきりとは、まだ」
「祖父帝は、
(はい、はい。だから、腹違いの兄にくれてやったんですよね)
「
内務の
「
「おおよそ、
「両方にございますよ」
※真白月は 「わたし」と言うところを しばしば 「たわし」と言いそうになって
「わ、たし」と言っている
半年ぐらいたてば直ると思う
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