11 排他的神官騎士
〈四匹の力持ち〉のうち、
その心構えがあったとしても、目にした藍色の星空に、
巨岩の上に、
(星は、おのおのが動いていると、おんじぃは言っていた)
(この星空が、まるきり変わってしまうときに、ここに立っているのは、どんな人なんだろう)
静かに話しかけられたのは、そのときだ。
「――
「その先は崖です。こちらへ。どうか」人影は左腕を差し出した。
「おぬし」
「わたしは女神を
その背丈と身のこなしが、演武を舞っていた女に重なった。
「――あのときの
「
フードからは、つややかな銀の髪が肩に流れていた。
顔立ちは星明りでは、よくわからない。青年、だろうか。
「代々、
「ツブラ氏」
「なぜ、城で
「この地は、われらの神域であり、あの城も本来なら侵略者が立ち入るべきではない場所。——警告、です」
〈外〉は異なった宗教の者同士が争う、まだ、そういう文明期らしかった。
「夜気に冷えましたか? こちらへ」
「足元に、気をつけて」
たしかに、足元は岩山で不安だった。
「わたしの袖ごと、おつかまりください」
男には
岩場から奥へと石階段が続いていた。
「ここは、谷になっている岩山をくり抜いて作られています。空からの目でも持っていない限り気づかれることはないでしょう」
洞窟の石階段を一段ずつ下りていく。
「地下迷宮に似ている」
「地下迷宮を知っているの?」
「おとぎ話程度には。ここは静かに」
相手が黙ったので、
洞窟の中は目が慣れると少しは明るい。石の壁自体が光を蓄えているようにもある。
「壁のくぼみで、ニワトリが寝ているので」
目をこらしてみると、3羽ばかりの茶色の柔らかな塊が見えた。
「本物。はじめて見た」
ニワトリたちは眠っていた。
「明け方、卵を産みます。卵は
「すご」
真白月は、つかまった手に思わず力が入ってしまった。
「地下迷宮に比べたら、原始的な装置ですよ」
青年は
相変わらず、ぼんやりとしか見えないが、その面差しは端正だ。その落ち着きのわりに若い。青年といえる。
「それは、〈かぼちゃの馬車》〉ですね」
「あの方が、外に出ることをお許しになりましたか?」
「あの方?
その声は夜のように静かだ。
「
「……?」
「夜明けまでには時間があります」
そして、崖の
ふたりが転送されたのは、〈4匹の力持ち〉の4つのアーチ門の
「
青年はアーチのレリーフを確認した。
「――何、する気っ?」
この男が不穏なことしか考えていないとは、
「異教徒を、血祭りにするんですよ」本気の声色だ。
「そういう宗教感のちがいで争いになるの、やだ。離せっ」
そのまま。ふたりは竜のアーチ門へ進んだ。
「トゥヤ!」
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