15 かくれ里へ遠足
ただ、外での暮らしが長くなるほど地下迷宮へ戻れなくなる、という文言は気がかりだが。
次の日の、まだ明けやらぬ時刻のことだ。
「よかったの? ついてくるって」
「父上の許しを得られたとしても、小隊つきですよ。それで、かくれ里に行ったら、もはやそれは、かくれ里ではない。私は領地に住む人と仲良くしたいのです」
先頭を行く
「見上げた御心がけだが、自分が現地民に殺されるとは思わないのですか?」
「殺されるなら、あの晩、殺されていると思うので」
トゥヤは、にっこり答えた。
「それに、私もユス先生も簡単には殺されませんよ? 私たちに何かあれば、父の全軍が、かくれ里に向かうでしょう。そんな危険なことをする必要は、あなた方にない。それに、私とユス先生は
「……」
(はい、トゥヤの勝ち~)
ユスは心でつぶやいた。
「ごめんなすって……。何か、
「いえ。
「了解です」
ところで、なぜ、あの転送システム〈四匹の力持ちの門〉を使わないのか。
かくれ里は、徒歩だと一刻(2時間)以上はかかる場所だ。
あえて、4人が歩いて向かっているのは、真白月を〈外〉に順応させるためだった。
「
ふたり一組で手をつないで歩いて行くのだ。
それを出発前に提案したが、どの組み合わせでも
それに、道は時折、せまくもなるから、一行は一列に隊を組んで歩いている。
ユス先生は水の入った竹筒や、もしものときの非常食の乾パンや角砂糖を
それから、
「いや。かくれ里に泊まるから、これは、す、すでに、
「さっきから、
うしろから、トゥヤが笑った。
「
「言っていることが8割くらい、わからない」
「むしろ8割わかれば、すばらしい」
トゥヤとユスは、とりあえず笑っとく。
あとは4人とも黙々、歩いて行った。
山路はけわしい。
難所があって数回、迂回し、地表の細道や洞穴の通路を通った。
これを何なく、かくれ里の者は行き来しているという。
ユスは石の収集をしたり、古代の石碑を見つけるとスケッチしたりしながら考えていた。
(進軍してきたとしても大掛かりな武器は持ち込めない。馬も、この石だらけの道では、足をくじきかねない。まず、一頭ずつしか進めない)
要するに天然の要塞。現帝の祖父が、この地の侵略を割に合わないとしたのも納得だ。
「ここを抜ければ、かくれ里です」
岩山を利用して、石壁に囲まれた
アーチ型の入り口の前で、女が待っていた。
「お帰りなさいませ。
涼やかな声が、筆頭神官騎士の名を呼ぶ。すらりとした姿の女だ。
その額に、
衣は、生成りの貫頭衣のくるぶしまであるもの。ただし、
靴は、うすくなめした皮だ。爪を岩で傷つけないように、つま先は補強してある。
一言で言えば、いい女だ。
一行は、かくれ里の中へと進んだ。
かくれ里の住居は、岩肌を彫りこんである。それでいて、時々、ぽっかりとした庭のような空間に出る。その空間に山羊などがいたりした。
トゥヤとユスに警戒したものかもしれない。
「頼む」
「こちらへ」
その長身の女に伴われて、一行は洞穴の廊下を歩いた。二間続きの洞窟部屋に案内された。
そこは、意外と日の光が入る場所だった。手織りのしっかりとした
「あー。
また、突如、
「ほんとに、
「そうなの? たわ、わたしも若干14歳だし、
「ろく、って、女神サマ、実はメインコンピューターだったよね」
「名前は、ないしょで」
真白月が右手の人差し指を唇に当て、しぃ~の仕草をする。
「聞かないよ。名前を聞くと責任取らなきゃいけなくなるでしょう。
「あの、トゥヤさん」
「トゥヤでいいよ」
「あれ、実行責任は伴わないって」
「え。ラッキーハプニングだと思っているのに」
トゥヤが、うやうやしく
「
「逆に狙われたらどうするのです」
ユスが真顔で言った。
「とにかく、婚姻のことは、わからないので! システムでも、その分野は15歳以上となっていて、まだ視聴していないし!」
「そもそも、システムとは?」
ユスが食いついた。
「システム、
「身についてるかは別として。それほどの科学力を持っている
ユスの質問に、「遠くなのかなー」としか
「今度、ろくに聞いてみようよ」
トゥヤが、さっさと
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