全年齢版(本番はフォルダの中)

「話していて楽しいことは認める」

「お」

「一緒にいたら楽しいだろうなってこともまあ理解る」

「おお!」

「触れてドキドキしたことは事実だ」

「へへへ」

「好きっちゃ好きだ」

「あんまり嬉しくない答え!」

 登志子が仰け反っていた。

 ガワタ捨てて魂だけになって本質が出てきたのだとしても、登志子って最早性格変わってない? 大丈夫?

「いや、だってな? 逆の立場になって考えてみろ? 想像してみ? 好きだと言い合い触れ合う度に罪悪感が首をもたげるんだぞ? 感情がブレーキ掛けるのも致し方ないと思わないか?」

「ああ~」

 想像を巡らせているのか登志子は曖昧な半笑いを浮かべ頬をかいた。

 事実。罪滅ぼしみたいな気分で抱き合うのも俺が辛い。

「ふふ」

「?」

 登志子が悪戯めいた瞳をした。そのまま近くまで寄って来る。下から覗き込まれる。

「じゃあ、試してみますか?」

「お、おい」

「ん――」

 登志子の顔が近づいて来る。何か言おうにも俺は応えられず、そのまま唇と唇が触れ合った。

「ちゅ……。ぴちゅ。ん」

「んくっ」

「ちゅく。ちゅ……どうです? わたしに対して罪悪感はありますか? ブレーキは掛かりそうですか?」

「ブ、ブレーキは」

 掛からなかった。





「はあ。はあ」

 同時に息を付いた俺たちはお互いが至ったのだと知った。目と目で通じ合う。手と手で通じ合う。触れ合い解け合い一つになる。

 まるで魂まで溶け合ったように感じたのは決して錯覚ではあるまい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る