さよなら人生。

おいブス！

「てめえブスマジ調子のんなよ」

「？」

「おいブス！」

「……それってわたしのこと？」

「お前以外誰がいんだよブス」

「ウケるんだけど」

　授業合間の休み時間に話し掛けてきたさっきの子ら。

　片方のおかっぱは声のでかいこの子に追随しているだけっぽい（？）、となるとこっちがイジメの本命か。

「どうしてくれんだよたんこぶ出来たんだけどさっきのあれ教科書といい次やったらいつの間にか戻ってる上履きから何から何まで全部ゴミに」

「ねえねえそこの男子たちー」

「はい？」

「お前なに無視」

　横で早口で喋っとる子は無視して近くの男子集団に話し掛けた。陽キャと陰キャっぽいのがいい感じにハイブリッドされた集団。色んな意見が聞けそう。

「わたしとこっち、男子の目から見てどっちがかわいいと思う？」

「……はあ？」

「何突然こいつ」

　冷める二人に言ってやる。

「ブスって言うから。前から気になってたの。わたしはかわいいのかどうか。男子の目から見てどの程度か。ほらアンケートよアンケート。女子がよくやる。ゲームだからゲーム。はい男子共！　早く答えて！」

「……なんか枡田さんキャラ変わってね？　いいけど」

　顔を見合わす男子ズ。きょとんとしてる。あんまりこっちのイジメ問題には関心なさそうだなぁ。

「……」

「……」

　で、こっちはあんまり男子と免疫なさそうだ。きょどり気味。

　本来わたしもそっち側だけどね。

「枡田さんかー。枡田さんと篠原さんだったら僕篠原さんだなー」

「空気読めよキモオタ」

「え。怖」

　横で小さくガッツポーズ決める篠原さんとやらの得意げな顔がすごく鬱陶しい。

　そこは！　わたしに！　入れるべきでしょ！

「う、どうしよう。今のでちょっと枡田さんに傾いたかも」

「なんで（笑）？　お前エムだったの？」

　＠モブ。

「ふふ。わたしには分かる。真のキモオタはむしろキモオタと呼ばれるのを喜ぶまであると。昨今面と向かって罵倒する子も少なくなってきたからね。そうでしょう？」

「う、うん」

「なんなん気持ちわりぃなお前ら。まあいいや。俺？　俺は枡田さんだなー。前っから美人だと思ってたし。あ、ねえ良かったらライン教えてくれない？」

「持っておいきなさい！」

「あ、ぼくもぼくも！」

　サラリと人様のＩＤ渡しちゃうわたし。

　まあ、ラインはうざったいかもしれないけど、鬱陶しかったらスルーすればいいしね。困ったら何かしら助けになってくれるでしょう（言い訳）。

「さあ行くわ！　アンケートはまだ終わってないの！　そこの男子共！　わたしと彼女、どちらがかわいいと思うか、言って御覧なさい！　さあ早く！」

　ぐぐぐぐ、と拳固めて悔しそうに歯噛みするおかっぱ尻目に男子共とたくさん仲良くなってった。

　結果。

　なんだみんないい人そうじゃん。本当に声のでかいこの子に怯んで触らぬ何とやらに徹してただけっぽい？

　ああ、だめ。抑えられない。

「十一対三！　わたしイズかわいい＆美人！　おほ？　おほ！　おほほほほほほほほほ！　ほほほほほほほほっほほっほほっごほひゃああああああっ!?」

　背中に雪詰められたみたいな感触を感じ、高笑いは中断。おかっぱ二号が引いている。

「なんだこいつ」

「おトイレいてくる！」

「お、おう？」

「ぽー（惚）」

　ぽーっと投票三入れてくれた男子に視線をやってる乙女を置いてすたこらささー。