3話 最後に笑うのは

ー森の中の別荘ー


天「へぇ〜、こんな別荘を伊吹が持ってたんだな」

伊吹「違うよ、私の親友の別荘だけど、合鍵を持ってるからしばらく使わせてもらってるだけ」

天「....親友か.. いつの親友なんだ?」

伊吹「中学時代」

俺の言葉に被せるように言ってきた


天「..もう少しで太陽が来るな もしかすると警察が一緒に来るかも知れない 別荘の探索するか」

伊吹「...」


2人で別荘内を探索する 




意外にも埃があまりなく、掃除をしているらしい


天「誰か、掃除してるのか?」

伊吹「私が掃除してるよ 毎週ね」

天「なんで伊吹がしてるんだ?」


伊吹「そりゃ、親友が掃除できないからね」

天「...そうか」

おそらく伊吹は…



食器はなく、調理道具もない


リビングのところで写真立てを見た 伊吹ともう一人の少女が写っていた


天「この子が、親友なのか?」

伊吹「そうだよ、可愛い子でしょ」

天「.....そうだな」


幼い頃の写真、どこにも大人の頃に撮った写真はない..




伊吹「親友はさ、誰とでも仲良くなってホントに天使みたいだった…」


俺が歩いている最中に話しかけてきた


天「....」もう分かっていた、全てのシナリオに



天「これは、なんだ?」鍵が付いた箱を本棚の上に見つけた

伊吹「あぁー、それね 番号がわからないし、親友が鍵をつけてる物を開けるのもどうかと思って見てないんだ」


俺は、そっと箱を机の上に置いてそのまま放置した




天「もうそろそろ、太陽が来るな さぁ、ここからどうしようか….」

伊吹「...」彼女の表情が曇る




天「伊吹.. お前は一体、何をするつもりなんだ?」彼女に問いかける




伊吹「..はぁー、ここまで来て何もわからないんだ...最低だね」

今までの明るいトーンではなく、乾き切った声だった




天「お前が父さんを殺した犯人だってことはわかってる」



伊吹「!?」


天「俺のベッドの下に父さんを殺した刃物を置いただろ...それも俺が普段使ってるであろう包丁を それに、お前は妙に急いでいた..あれは事前に警察を呼んでいたんだろ? そして、俺は部屋が7階とは言ったが、何号室かは言っていない まだまだあるが、言うか?」


伊吹「もういいよ...さすが幼少期からの殺人鬼からすれば私の殺人はアマチュアってところかしら?」


天「..やっぱり、気づいてたんだな…」


伊吹「最初に気づいた時は驚いたよ、中学の名前とは違かったし、顔も変わってるし、だけどね、連行された時に見た腕の傷跡は忘れないよ 親友を殺した時につけたその傷跡は!!!」


俺の左腕には傷跡があるそれも包丁の傷跡が


天「…」


伊吹「言い訳はしないの?あの時に殺したのは不可抗力だったって」


天「…」俺は目をつぶる




伊吹「…父親が殺された時、何も感じなかったんでしょ?」


天「.....何も感じないか、そんな人間だったら尚更よかったのにな」


伊吹「は?その正常な人を演じるのやめたら?」


天「伊吹はどうしたいんだ?俺を殺したいのか?」


伊吹「そう、あなたを殺したい、でも、社会的に抹殺するのが私のやりたいこと 今回の事件であなたにまた、注目が浴びる そして、マスコミはあなたの過去を取り上げる そして、あなたは日本中を逃げ続けることになる それが私の考えたストーリー」


天「大したもんだ それほど俺を憎んでるんだな」


伊吹「当たり前でしょ..私の親友はもう帰ってこないんだから…

     逃げる人生になる前に教えてよ、なんで私の親友を殺したのか」


驚くほどに別人だった 俺は、彼女の7年間を変えてしまったのだろうか


天「もう少しで、太陽と警察が来るが逃げなくて良いのか?」


伊吹「...で、なぜ殺したの?」


天「後悔するぞ 真相を聞いたら…」


伊吹「は?後悔?するはずないじゃん!!そのうざったいのはいいから話しなよ!」









天「俺たちは付き合っていた」



伊吹「........」伊吹の思考が止まったようだ 予想していた言葉とは真逆の言葉に


天「俺が両親の転勤と一緒に海外に行くことになり別れ話を「ここで」したんだ その時に口論になって間違って食器棚にぶつかってナイフや皿が落ちてきて運悪く流美の首に….」


俺は声が詰まってしまった あの時の情景からか言葉が出てこない


伊吹「いいよ、そんな作り話...本当のことを教えてよ!!」


足音が玄関から聞こえる



天「この足音は2人だ おそらく警察も来てるだろう その左腰元に隠してある包丁隠した方がいいじゃないか?」


咄嗟に、伊吹は、包丁を取り出す


さっきの大声を聞き、ここの場所がわかったであろう太陽と警察官?が入ってきた


太陽「おい、伊吹待て、早まるなよ」刺激しないように間合いをとった


伊吹「太陽ごめんね、考え変わったよ、こいつを殺さなきゃ気が済まない」


天「そのテーブルにある箱のダイヤルあるだろそれを」


蒲田「刺激するな、自分の立場を考えろ」


伊吹「無理だよ、狂ってるからね」


天「...ダイヤルの番号をさ、1007にしてくれないか?太陽頼む!」



その通りに従った 

いつもの天のあの優しい顔だったから


ダイヤルを1007にした




そして、箱が開く


伊吹「なんで!!」

驚いたようだ、無理もない 


俺と流美だけが知っている番号だから


天「それはな、俺たちが付き合い始めた日なんだ 中身は..」


伊吹「太陽!中身はなんなの?」


中を開けると大量の写真と手紙が入っていた 


俺たちが色んなところで写真を撮った思い出の結晶 

電話は嫌いだという流美のワガママに乗って手紙を書いて送り合った毎日 


本当に懐かしい あいつも残してくれてたんだな 俺の部屋にも同じく取ってある 鍵付きの引き出しに 鍵は、俺のポケットに


伊吹「嘘だ!そんなのないよ!!付き合ってたなんて、あんたの妄想でしょ!!全部全部あんたの空想を入れ込んだだけでしょ!!」



蒲田「これは、ホンモノだと思いますが.. 明智さん、なぜ、流美さんを殺したんですかい?」

天「..事故だったんです」

蒲田「事故となぜ言わなかったんですか?」


天「...俺が別れると切り出さなきゃ流美は死ななかった だから、罰を受け入れることにしたんです」俺は、流美の喉元に刃物が刺さった時に思わず、刃物を触ってしまい そこから、俺が殺人の容疑者となった


伊吹「.....そんなの嘘に決まってるでっち上げだよ!!」

太陽「なぁ、この写真を見てみろよ この笑顔が嘘だっていうのか?」そう言って


二人っきりで別荘で撮った写真を伊吹に見せた


太陽「こんなのが何枚もあるんだよ 伊吹は親友のこの笑顔を否定できるのか?」


伊吹は、太陽の手から写真を取り、次第にじっくりといくつもの写真を見始めた




伊吹「否定なんてできなぃぃよ.....」そう泣きじゃくってしゃがみ込んだ






蒲田は、その隙を見逃さず、包丁を取り上げた







蒲田「ふうぅ、これで一件落着ってか あとはお前たちで話し合うんだな 外野は部屋の外で待ってんだわ」と言い、外へ出ていく


太陽「ごめんな、俺気づかなくて、そんなにも伊吹が悩んでいたなんてさ」太陽は、伊吹の元へ近づく

伊吹「わ....わた....私はど、どうしたらいいの?太陽 天のお父さんを殺しちゃったよ...」

太陽「伊吹は、人として過ちを犯した 当然罰せられなきゃいけないことだ 俺は、いつでもお前を待ってる..ずっとな...お前がおばさんでも… 


でも、その前に天をずっと逃げ続ける運命にしちゃダメだ 犯行の動機を伊吹が話せば、天はまた逃げなきゃいけない わかるよな?」


伊吹はうなづく


太陽「だからさ、犯行の動機は俺たちで作り上げよう きっと、蒲田さんもわかってくれる」

天「..」


太陽「天、お前には本当に悪いことをした こんな友人たちでごめんな.....」


太陽の目から大粒の涙が流れた 

おそらく、色々な感情がごちゃ混ぜになっているのだろう



天「伊吹、すまなかった(頭を下げる)


流美から色々聞いてた 


大事な親友がいて、どんな時でも私の手を引っ張って進んでくれるかっっこいい親友がいるって 


俺はさ、その親友の話が出る度に嫉妬してたんだ 


だから、親友である伊吹と合わない?って聞かれても断ったんだ 


もしかしたら、お前と会っていれば、こんなことにはならなかったかもしれない」


伊吹「何よそれ...」再び泣いてしまった


警察が入ってきて、伊吹は取り押さえられ、太陽も一緒に付き添った



俺は、机にあった写真を手に取る


天「…くうっうう…」涙が溢れた



警察は、俺に一瞥して立ち去った














そして俺は、ニヤリと笑った

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あなたは、絶対に騙される!!逃げた恋の記憶 あけち @aketi4869

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