2話 不穏

ー北田太陽(きただたいよう)ー


太陽「刑事さん、明智がなんかしたんですか?」


蒲田「そうですねぇー」周りを見回した 大学の校内はたくさんの学生が往来し、異様なオーラを纏う蒲田に注目が注がれていた


蒲田「場所を変えましょうか...10分ほど離れたところに大きな公園がありましたよね? そこにいきましょうか?」


太陽「....わかりました」質問を遮り、相手をコントロールする話術に太陽は苛立ちを覚えた




ー公園ー



蒲田「大学というものは楽しいんですかい?私は、大学に行かなかったものですから」

太陽「そういうのはいいですから、話を続けましょう」蒲田は頭をかいた

蒲田「実はですね....」今、起きた事件のあらましを太陽に伝えた


太陽「....」無言になった


だから、アイドリングを入れようとしたのにな



蒲田「北田さん、あなたにお話があります」

太陽「なんですか、友達を売れっていうんですか?」


蒲田「そうではないです 重要参考人となっているので明智さんを呼んで欲しいだけです 話を聞いて身の潔白を証明して欲しいのです」


私は、北田に紙を渡した


周りは、平日の昼間で田舎寄りなため、ほぼ誰もいない

太陽はその言葉を聞いて悩んだが、こう答えた


太陽「では、電話をかけますね」スマホを取り出し、電話を鳴らした

蒲田「おっと、スピーカーでお願いしますよ」


コールオンが鳴る

1回

2回

3回

4回 無理だと思った


しかし、


…「もしもし」男の声が聞こえた

太陽「おい、天 今どこにいるんだ?」

天「どこって家だけど」

太陽「嘘だろそれ、さっきお前の家行こうとしたら警察がごった返している

なんかあったのか?」

天「...」

太陽「...おい、なんか言ってくれよ」



天「太陽さ、なんで電話番号知ってるんだ?」



太陽「......」北田の顔から汗が吹き出したのがわかった 


天「お前さ、誰かと一緒にいるだろ?」


驚くほど、冷たく感情がない声だった こちらの行動を全て見られていたかのような一言


太陽「いぃぃや、誰もいねぇよ...前になんかで電話番号教えてもらったんだよ 

それよりさ、俺の家で馬鹿話をしないか昔みたいに」

天「馬鹿話か..じゃあさ、俺が指定した場所にきてくれないか?もちろん、1人でな」

太陽「おい、それよりお前は.......」言葉に詰まっていた


天「なぁ、太陽、お前は相手の言葉を予想するのは得意だろうけど、本質的に聞きたいことはいつも聞けないよな.. じゃあ、LINEに場所を送るから 5時間後の19時にそこに落ち合おう」


と電話が切られた


蒲田「最近の子は電話番号も知らないのか、本当にすまないことをした」

太陽「いえ、では俺はここで失礼します...」太陽はここから立ち去ろうとした


もしかしたら、天が俺たちのことを本当に見ているかも知れないと思ってのことだ


蒲田「立ち去る前にこの写真を見てくれませんか?」と言って、女性の写真を見せた

太陽「...この女性が何か?」明らかに動揺している

蒲田「東名大学の学生ですね そして、あなたたち3人はいつも仲良しで一緒に行動しているとか....」

太陽「どこでお聞きしたんですか?」

蒲田「あなたにお会いする前にちょいとばかり色んな学生さんからお話を聞かせてもらって知っただけです」


眉間に皺を寄せた北田の反応にわかりやすいなと思い少し苦笑いをした


蒲田「で、彼女は、どういう人なんですか?」

太陽「少人数授業で仲良くなったんです そこから、親しくなって学校帰りに遊ぶようになって」

蒲田「そうですか    その、平等さんのご自宅に行きませんか?」

太陽「はっ? 刑事さん、伊吹が犯罪に関わっているというんですか?」


その言葉だと、明智の方は黒だと思ってるんだろう あの電話じゃ無理もないが…


蒲田「先ほどもお伝えしましたが、平等さんも現場付近で目撃され、明智と逃げている可能性があります 平等さん宅に電話しましたが、留守でした」

太陽「伊吹も実家暮らしですからね 両親の許可が無いなら行けないじゃないですか」


順調に実家に行く流れに刑事として成長したなと思った


蒲田「えぇ、そうですね ですが、伊吹さんご自身に聞いてみたところ実家に入っても良いとのことでした」

太陽「はっ??伊吹に直接聞いたんですか?」

蒲田「はい、ですが、肝心の居場所までは聞けませんでしたがね...」

太陽「なぜ、許したんでしょう?」

蒲田「そればかりはなんとも...ですが、大きなチャンスかも知れません、どうです?」


おそらく北田は、明智が犯罪を犯し、無理やり平等さんを共犯にし、隙をみて刑事の電話に出たと思ってるんだろう





まぁ、実際は、そんなことは   ない   のだけど




太陽「では、いきます、なにかの助けになるかも知れませんので...」

蒲田「...じゃあ行きましょうか」





ー平等家ー


結構立派な家だな 警察の情報網で特定した


太陽「ここが、伊吹の家なのか..」

蒲田「初めて、来るんですか?」

太陽「えぇ、普段は大学に近い自分の家ですので」

蒲田「そうですか、それより明智から送られてきた位置情報はどうなってます?」

太陽「あぁっ、そうでした えぇっっと...」スマホに目を向けながら操作をし始める その隙に、家のドアノブを回す


ドアノブが回る


蒲田は、空いていることに妙な怖さを感じた 


太陽「あっ、ここです」


森の中にポツンとある一軒家....おそらく別荘だろう


蒲田「なるほど ここなら、捜査の手は届きませんね」

太陽「ここに警察を送るんですか?」

蒲田「明智がまだいない可能性もありますし、見張り役で平等さんを使い、警戒してるかも知れない ですから、それはできません」

太陽「なるほど」


北田は、完璧に明智を犯人だと思っているんだな…


まぁ、こちらとしては扱いやすいので助かるが、危ういな


蒲田「ではいきましょうか」


平等家に入り探索を始めた



家の中は意外にもシンプルで豪邸とは思えないほど、高級な家具はなかった


太陽「刑事さん、伊吹の家3人暮らしなのに生活感が無いですよね」

蒲田「...」部屋のあちこちを見て回ると1人分のものしか無い

蒲田「では、2階に」2階の探索を始めた




そこで、とある引き出しの中からある箱が出てきた

太陽「なんですかそれ、しかも鍵付き...」壊そうかと思ったが

蒲田「では、鍵を探しましょうか」




探し回ってようやく鍵を見つけ、中を開けた


太陽「なんですか、これ..」



少女2組の写真と7年前の事件の新聞切り抜きが大量にあった 

しかも、新聞には包丁を突き立てたかのような跡が何十箇所もあった



太陽は、気分が悪くなったのだろう口を抑えながら、うずくまっている


蒲田は切り抜きを取り

蒲田「やはり7年前の事件と関係があるのか…」


新聞をよく見ると死亡者1名と書かれており、小さく名前が書いてあった 

流美(るみ)

写真には、「2人っきりで流美のデカいお家に行った記念!」と書かれていた



蒲田は、天井を見上げた


刑事をしていて悲しい気持ちになったことは何度もある、心が折れたこともある 



だが、こんなにも切ない気持ちになったのは初めてだった


太陽「k..け...刑事...さん いや、待ってくれよ、伊吹が犯人だっていうんじゃないだろうな? 違うって 違うよ...違う...犯人がわざとこの新聞と写真を置いたんだよ!」


北田もわかっているはずだ、

 この写真と切り抜きの古さ加減と涙の跡がいくつもいくつもあることの意味を


 彼女は、ここで….



蒲田「北田さん、おそらく、7年前の事件の天童風は明智に間違えないでしょう

7年前は中学生であの頃から骨格も顔も変わっています もしかすれば、整形もしているのでしょう」


北田は泣いていた 


自分の友人の真相を聞き、楽しかった思い出を思い返しているのだろう


蒲田「北田さん、ここはあなただけが平等さんを救えるのですよ!!もう時間もない、行きましょう」


太陽「なんですかそれ、俺が伊吹を救う?何から救うんですか?」

蒲田「殺人は禁忌です! 彼女は自分の心の中で戦った、だが、彼女には頼れる人がいなかった 一人暮らしで家族もいない、友人の一人は憎きあいつ あなたが彼女を支えれた唯一の人なんです!」


太陽「じゃあ、遅いじゃないですか.....」


蒲田「ふざけるな!!遅くないに決まっているじゃないか!!!それでも友人なんですか!!!!」


蒲田は久しぶりに怒号をあげた



蒲田「すみません..大声をあげて 私じゃダメなんです、あなたなんです….

昔ね、私も似たようなことがありましてね、そこで部下を殉職させてるんです 私が犯人の確定を早くしたばかりにね...  あなたにはそうなってほしくないんです...だから」


そう言って頭を下げた


北田は、それを見て少し考えた後




太陽「刑事さん、俺に伊吹を救わせてください だから、力を借りていいですか?」


蒲田「えぇ...もちろんです」




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