第3話 曲がり角の衝撃
「ああー! 遅刻しちゃう!」
リビングに置いてあった鞄をひっつかんでソファを飛び越え、テーブルの上に置いてあったかじりかけのトーストを口に咥えて家を飛び出した。
階段を三段飛びで駆け下りて住宅街をひた走る。
「|ふぃほふふぃほふー《ちこくちこくー》!」
走ることに集中しすぎて全然食べられてないトーストを咥えたまま角を曲がると、どーん! となにかとぶつかった。
「きゃっ! いたたー……」
アスファルトに打ち付けたお尻をさすっていると、目の前に手が差し出された。
「悪い、大丈夫か?」
顔を上げると、そこには顔の右半分が映画終盤のターミネーターのようになっている男の子が立っていた。つまり銀色のフレームが剥き出しってこと。
「あ、うん……ありがとう」
手を借りて立ち上がる。
あらためて男の子を見てみる。
学ランのボタンは全部開けてるし、下に着てるのはワイシャツじゃなくて真っ赤なティーシャツ。
オマケに首には金色のチェーン・ネックレス。
髪型は茶髪のワンブロック……というかそもそも右半分の皮膚がない。
もしかしてこの人、不良さんなのかな?
「その制服、もしかして雄馬学園の生徒か?」
もし絡まれてもわたしならワンパン。
そんなことを考えていたけど、不良さんの声色が思いのほか穏やかだったのでわたしはこっそり握っていた拳を開いた。
「そうだよ」
「そっか。ならちょうどよかった」
「ちょうどいいって?」
「実は俺、今日から雄馬学園に転校してきたんだけど、恥ずかしい話道に迷っちゃってさ。もしよかったら場所を教えてくれないか?」
「学校はあっちだけど……」
わたしは学校の方角を指さした。
「お、そっか。サンキュ」
「一緒に行こうか?」
「いいのか?」
「うん。どうせ目的地はいっしょだし」
「そっか、助かる。俺は――――む!」
不良さんは突然首筋を押さえると険しい顔になった。
「なに……? そうか……またダークマターの反応が……わかった、ひとまず現場を確認する……了解」
なになにこの人? もしかしてちょっと痛い感じの人なのかなぁ?
「悪い、急用がはいっちまったから俺いくわ」
「え? でも、もうすぐホームルーム始まっちゃうよ?」
「それでも行かなきゃいけないんだ! じゃあな!」
「あ……」
不良さんはさっきわたしがカルマーンを回収した空き地方面に走っていった。
「変な人……」
「ラグナちゃん、学校はいいんですか?」
「あ、いっけなーい!」
慌てて走り出す。
「ラグナちゃんトーストトースト!」
「おっとっと、そうだった!」
急ブレーキをかけて振り返り、不良さんとぶつかった拍子に落としたトーストを拾う。
さすがに砂利まみれで食べられそうにないけど、このまま捨てておくわけにもいかないのでもっていくことにした。
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