第3話 師匠の名はKINNIKU?
「……ん、ここは……。」
「気が付いたか?肉食べるか?」
「起き抜けにお肉はちょっと……。」
「軟弱だな。だからそんなに小さいんだぞ。肉喰え、肉。」
ほらっと投げてよこす骨付き肉の塊。
当の本人はその骨の部分を握り、豪快に食らい付いている。
「あ………はい。」
私は肉の塊を受け取り、違和感に気づく。
自分の記憶にあるより手が小さいのだ。
それだけではない、心なしか視線も低くなってる。
「これは一体………って、きゃぁぁっ!」
「ん、どうした?」
「こっち見るなぁ、バカァっ!」
私は腕で大事なところを隠す。
全裸だったのだ。
「ふぬ、そんな筋肉もろくについておらぬ身体なぞに興味はないわ。ましてやお主のような子供に欲情するわけなかろう?」
「子供って……確かにおっさんから見れば小娘かもしれないけどね……。」
そう言いながら胸を見下ろす。
心なしか……というよりかなり小さくなっている。
「というか、服はないの?私の服!」
「ウム、ないっ!」
「ないってどうしろってのよっ!」
「筋肉を鍛えればよい。鍛え抜かれた筋肉の前には衣類は不要っ!」
……ダメだ、コイツ。
結局、そこらに転がっていた麻袋と布で、何とか身体を隠すことに成功した私は、肉の塊を齧りながら、色々と思考をめぐらす。
ちなみに、筋肉のおっさんは、肉を食べた後、「腹ごなしをしてくる」と言ってどこかに行ってしまった。
「とりあえず、私の記憶に間違いなければ、ここが神々の遊戯場という世界なんだよね。」
私は小さくなった手足を眺めながら呟く。
布を探している時に、水瓶を覗いて分かったのだが、今の私の容姿は大体10歳前後になっている。しかも、将来は傾国の美女になること間違いなしの美幼女だ。
勿論ベースは私のまま。そこから微妙な歪みなどが整えられ、調整された結果の美幼女なので、従来の私のままでも、化粧の仕方や見せ方次第では、かなりの美女になれる可能性があると分かったけど、それだけだ。
今の現状に何の影響も与えない。
「って言うか、何なのよこれは。ふざけてんのっ!」
私はそばにあったものに当たり散らす。
全裸から脱して落ち着いたところに浮かび上がった言葉……『ステータス・オープン』
その言葉を唱えてみたら、目の前に文字列が浮かび上がったのには少し驚いたけど、その内容を見て、私は半分キレた。……さっきのはキレたわけじゃないよ?ただの八つ当たりだよ。
ってか、半分だけで抑えた私の自制心を褒めて欲しい。
ステータス画面に記されていたのは、ゲームでよくあるような数値ではなく、私が受けている恩寵についての説明のみ。
妖精女王ティナ……
『やっぱりロリよね。ロリが一番!ってことで取り敢えず10歳にしておきました。
レベルが上がれば、自由にロリモードになれるようになるから、全世界中のおにいちゃんをメロメロにしてね。
後、そのけしからん胸は、今のサイズが最小です。それ以上小さくは出来なかったの。残念だけど、エロリ路線もアリだと思うから頑張ってね。』
……うん、どこから突っ込もう?
とりあえず一番役に立ちそうもないうえに、一番厄介な能力だという事だけは分かったわ。
武の神シドー……
『お主はかなり筋肉を鍛えておったようだが、まだまだ足りぬ。しかも、あのロリのせいでせっかく鍛えた筋肉まで落ちてしまいよった。
なので、従来の力を常に出せるように調整し、更には、お主の意志でブーストした力を発揮できるようにしておいた。
キーワードは『マッスルオープン』じゃ。
副次効果として、お主の経験がすべて筋肉に変換できるようにしておいたので、これからも修行に励むがよい。』
……悪気はないんだよね?
とりあえず、シドーのお陰でこの姿でも、今まで同様の力はあるみたいだし。
だけど、筋肉に変換って何よ。
いっとくけど筋肉鍛える気はないですからっ!
叡智の女神テリーヌ……
『あなた魔法が使いたいって言ってたわよね。他の神に任せておいたら脳筋が一人増えるだけになりそうだから、私からは魔法に関する素養を与えておくわね。
最初のとっかかりは苦労するかもしれないけど、一度覚えちゃえば、後は息をするように魔法が使えるようになるわ。
更に制限をなくしておいたから、500年も修行すれば神に近い力をぺることも可能よ。
後、
……うん、今までで一番まともね。
と言うか、500年も修行する前に寿命を迎えるからね?
あと、おまけも使えそうだけど、メガネはいらないなぁ。
でも、一番残念そうに見えた女神が一番まともって言うのも、なんだかねぇ。
美の女神ディアドラ……
『やっぱり美貌でしょ。優姫ちゃんはもとがいいから殆ど触るところがないのが残念ね。仕方がないから
両手を合わせて、少し上目遣いで見るだけで発動できるの。これを使えば王子様だってイチコロよ。
あ、ドラゴンや魔王と言った上位魔族みたいに耐性の強い相手には効かないからね。
後、筋肉バカにも聞かないわ。アレは、元来の美的感覚が違うからね。
後、耐性の弱い相手には麻痺や石化と同様の効果があるから、あまり乱発しないでね。』
……えっと、何ていえばいいんだろ?
とりあえず魅了の魔眼は切り札に……なるのかな?ちょっと微妙。
混沌神ケイオス……
『うむ、多くは語るまい。何をどうしてもトラブルに巻き込まれるお主の為にこの力を授けよう。何が起きるか使うまでわからないが、取り敢えず現状に変化をもたらすことは間違いない。使いどころが難しく、癖のある能力だがお主なら使いこなせようぞ。大丈夫、悪い目が出ても、魂が地獄の業火に焼かれるだけだから安心するがよい。では健闘を祈る。』
……いやいや、地獄の業火って、全然安心できないよね。
それに現時点のトラブルはあんたらの所為だしっ!
まぁ、多く語らないって言いながら、結構親切に教えてくれてるのには感謝するけど…………。
だったら、どう使うのかの説明ぐらいしろやぁっ!
……ハァハァハァ。一つ一つの説明にツッコミを入れてたら疲れたのよ。
とりあえず、今の私はティナのせいで10歳の幼女。
だけど、シドーのお陰で、従来通りの動きが出来る。
つまり、今までの合気道や薙刀の腕はそのまま活かせるってこと。
そして、テリーヌのお陰で、情報を集める手段と魔法の力を手に入れた。
まぁ、ディアドラやケイオスの力はとりあえず保留でいいかな。
「だとしたら、まず最初に始めるのは情報収集かな?」
そもそも今の場所が分からないことには、話にもならないからね。
『ファイルオープン』
私はキーワードを唱えるけど何も起きない。
………ハァ、ヤッパリこれ?
私は仕方がなく眼鏡をかけ、再度キーワードを唱える。
すると目の前にグー○ルみたいなページが現れた。
「えっと、どうすればいいんだろ?………取り敢えず、『ここはどこ?』」
……………
…………
………
……
『この語句に関する検索項目は見つかりませんでした』
「じゃぁ『今いる場所の地名』は?」
……………
…………
………
……
『この語句に関する検索項目は見つかりませんでした』
「だったら、『魔法について』教えて。」
……………
…………
………
……
『魔法とは、マナをイメージ通りに変換する術。詳しくは魔導書参照』
一応答えてくれることはわかったけど………。
「『魔導書』って?」
……………
…………
………
……
『街で売ってる』
………。
そっか、売ってるんだ。
「『街はどこ?』」
……………
…………
………
……
『この語句に関する検索項目は見つかりませんでした』
………。
ウン、使えないって事がわかったよ。
その後も、色々ワードを変えてみたが、思うような結果はでなかった。
使えない機能なのか、使い方が間違っているのか………。
「ハァ、せめて魔法の使い方ぐらいわかればなぁ。」
「何だお主、魔法が使えぬのか?」
私の呟きに答える声がする。
さっきのおっさんが戻ってきたようだ。
「使えないんんじゃなくて使い方が分からないの。」
突然現れたおっさんに、そう答えておく。
「驚かぬのか……つまらん。」
どうやら突然顕れたのは、わざとだったらしい。
本当はかなり驚いたのだが、リアクションをするだけの気力が残っていなかっただけの話だ。
「フム、では使い方を教えてやろうかの。」
「オッ……オジサマ、魔法使えるの?」
「オ、オジ………。コホン。儂の名前はキン・ニークじゃ。キンでもニクでも好きなように呼んでくれてよいぞ。」
「ハァ、私はユウヒです。魔法のご指導よろしくお願いします…………師匠。」
私は、目の前のキンニクさんのことを、素直に『師匠』と呼ぶことにした。
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