6

俺が後にした中庭の方を振り返ることは絶対にしなかった。


俺はひたすら中庭に背を向け廊下を走り、教室までの階段を駆け上がった。


教室に辿り着いてからも、不思議とあの刺すような目が背中に張り付いているような気がした。




授業が始まっても、何も頭に入らない。


"かきざきなるみ"…



俺はそんな生徒を知らないし、名前も聞いたことはない。


そもそも陰キャの俺は友達すらいないのに、女子の名前と顔なんて一致している訳もない。


同じ学年なのか、そうじゃないのか…。


それすらも分からずに、彼女が俺に声をかけた意図ばかり考えてしまっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る