7

翌日。


俺はいつものように昼休みに中庭へと足を運んだ。


結局昨日の「カキザキさん」が何をしたかったのかも分からないままだったが、正直女子に興味のない俺はもう気にもならなくなっていた。



(おっ、今日はオムライスか〜。テンション上がるなぁ)


弁当箱を開けた途端に目に飛び込んできた大好物に、俺は柄にもなく気分が上がって口元を緩ませていたのだろう…



「夏向くん、笑うんだね!」



突然の声に驚くあまり、俺は全身をビクッ!と震わせて後ろを振り向いた。


危うく弁当箱が手から落ちるところだった…。


何故かそんなことを冷静に考えながらも、急上昇した心拍数は、きっと200に届きそうになっていた。


何故なら声のする方には…


というか、俺のすぐ真後ろには、昨日ここで出会った「カキザキさん」が立っていたからだった…。



「……びっくりした?ごめんね」


昨日見せたような、体を劈く鋭い視線とは打って変わった柔らかな微笑みを浮かべて、彼女は俺の隣に腰を下ろした。


「…!」


「あ、ごめんね。近かった?」


ケラケラと笑いながら俺の反応をいちいち楽しんでいるような彼女に、俺は何を言ったらいいか分からずにただ弁当箱を守るように抱えて彼女を見ているしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る