第25話 敵魔術師襲来
「よし!ゾンビどもが来たぞ!予定通りだ!」
ゾンビたちには知性が存在しない。ただ鈍重に襲い掛かってくるだけである。
力こそはあるが、それを生かせる知性が腐った脳では存在しないのだ。
ただただ前進する彼らは、簡易的な柵やバリケードに動きが防がれてしまう。
そんな「彼らに対して、樽に入れられたオイルランプ用の油が叩き込まれ、そして火矢が次々と叩き込まれていく。
「が、ガァアアアァ!!」
油に火矢が叩き込まれ、ゾンビたちは激しい炎に包まれる。腐敗した肉が焼ける嫌な臭いが周囲に立ち込めるがそれどころではない。
「燃やせ!燃やせ!教会に近づけるな!教会を燃やしてしまっては元も子もないぞ!!」
一応教会にもボロボロの結界は存在しているが、それも紙のようなものでしかない。数十体ものゾンビたちを防ぎきれる力は存在しない。
そのため、火災を防ぐためにもゾンビたちを教会に近づけるわけにはいかない。
アリシアたちは、剣ではなく教会から借りたモーニングスターで他のゾンビたちを打ち砕いていく。
「うぉおおお!くたばりやがれですわ!お兄様の教会には指一本触れさせませんわ!!」
そう叫びながらエレオノーラはゾンビの頭部をモーニングスターで打ち砕いていく。
腐る肉で構築されているゾンビなど近寄りたくないが、それがエルのことであれば話は全く別である。
エルも、投石器を使って石を投げてゾンビに対して攻撃を仕掛けているが、ゾンビたちに対して有効打にはならない。
(やっぱりもっと強力な武器が必要か。でも銃は狂魔に対して有効的なのか……?)
しかし、この状態でそんなことを考えている余裕などない。ゾンビたちが襲い掛かってきたという事はどこかにそのゾンビ化の呪文を使用した敵がいるということである。
しかし、陰ながら『敵感知』『生命感知』を行っているが、一向に敵、おそらく魔術師であろう存在は発見できない。
必死になって周囲を探っているエルの元に、一つの強い反応が感知する。
近くの森の中、木々の後ろ。この深夜でほとんど照明がない状態では見つけるのは難しいだろうと思っていたのだろう。それに対して、エルはとっさに精神剣を展開し、それを槍状に変化させて探知した場所へと投擲する。
「!!」
投擲された精神剣に対して、とっさにそこから結界が張られて精神剣を弾き反らす。
だが、逆にいえばそこに何らかの存在が隠れているということは明らかである。
「アリシア!皆!!あそこに矢を集中しろ!!」
そのエルの言葉に対して、アリシアたちは次々と弓矢の攻撃をその場所へと叩き込んでいく。さすがの結界も連続攻撃を仕掛けられては維持し続けるのは難しい。
業を煮やした魔術師は、女性騎士たちに魔術攻撃を仕掛けていく。
「我が主たるツァトゥグァよ!我に力を与えたまえ!精神衝撃(マインドブラスト)!」
ローブを纏い、顔をフードで隠した魔術師は、女性騎士たちに対して精神を直接攻撃するマインドブラストを叩きつけていく。
例えレジストされたとしても、精神に与える衝撃は凄まじく、しばらく朦朧とするだろうという考えである。……そう、ここにエルがいなければ。
「させるか!精神障壁ッ!!」
精神を癒す術に長ける彼は、当然のことながら外部からの精神攻撃を防ぐ術式も持っている。魔術師の精神衝撃は、エルの精神障壁によって見事に阻まれた。
そして、呪文を使った隙をつき、魔術師に次々とアリシアたちの矢が突き刺さっていく。このまま妙な魔術を使う前に倒すしかない。だが、そんな彼女たちの目論見は魔術師の叫びでいとも簡単に砕け散った。
「おお!わが主よ!わが肉体を媒介とし、偉大なる御子を遣わしたまえ!イア!ツァトゥグァ!御子を使わしたまえ!!」
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