第24話 教会襲撃
―――深夜。それはもっとも狂魔の力が高まる時間である。
それは、エルの住まう辺境の地であっても例外ではない。
色濃い呪われた魔力の気配、その魔力が教会の共同墓場へと降り注ぐ。
その魔力によって埋葬されていた遺体がぼこぼこと埋葬された場所から、湧き出してくる。所謂ゾンビである。
この世界でも火葬はまだ一般的ではない。
狂魔たちに操られるぐらいなら火葬を!と願う人々も多いが、それでも火葬されたら旧神の存在する旧神郷エリシアに行けないと土葬を望む人々も大勢いる。
そして、そんな土葬された死体に狂魔は魔力を施して戦力に仕立て上げているのだ。
だが、普段は簡易的な結界が張られている墓地からその結界を破ってゾンビを仕立て上げるのは、それなりの知恵のある狂魔だけである。
墓地から目覚めたゾンビたちは、そのままうめき声を上げながら、エルたちの住まう大地母神の教会へと鈍い動きと共に襲い掛かっていった。
だが、自分たちの結界が破られたのを感知できないほど、修道院長も無能ではなかった。
「皆、よく聞け!!」
深夜だというのに、それぞれ個々に様々な鎧を身に纏った女性騎士たちは、騎士団長のアリシアの声に耳を傾けていた。
「墓地の結界が破られ、この教会に近づいてくるゾンビの群れが確認された!つまり、この聖者様の住まう教会に襲い掛かってくるということだ!そんなことを許すのか!聖者様を奴らの毒牙にかけようというのか!!」
「脳無しのゾンビどもや狂魔どもに聖者様を好きにさせていいのか!?否!!断じて否である!
聖者様を守護できるのはロクデナシの我々だけである!!騎士であり、星の戦士の末裔である我々の誇りを見せよ!功績を上げた者は、聖者様との時間を作るとの聖者様の仰せだ!!」
そのアリシアの声に、女性騎士たちは一斉に拳を振り上げて叫びを挙げた。
「まさかゾンビごときでビビってる騎士はいるか!?いねぇよなぁ!!」
「例え生前を知っていても滅ぼせ!!それが我々のできる唯一の慈悲である!!」
滅ぼせ!滅ぼせ!殺せ!殺せ!殺せ!
女性騎士たちは拳を振り上げながら声を上げた。聖者を守るという意思の元、彼女たちの士気は非常に高い。絶対にこの身を変えても聖者を守り通すつもりである。
「よし!ではまず簡易的なバリケードを作る!かかれ!!」
そのアリシアの声と共に、、彼女たちは教会の周囲に簡易的な柵や台車などと用いた簡易的なバリケードを作り出した。
さらにそれだけではなく、燃やすようの菜種油も用意した。
教会には照明用のオイルランプの油が「大量に存在している。その油なども防衛用に用意したのだ。
その間、エルは精神魔術を使用し、近くの野犬などを手懐け、ゾンビたちの位置を確認していた。大まかな位置さえわかれば後は『敵感知』による魔術で正確に探知するまでである。そんな風に彼女たちは慌ただしく教会の防衛準備を整えていた。
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