第16話 香水作りに石鹸作り
騎士団のための資金作りに悩まされる事になったエル。そのためには、修道院で金になりそうな技術などを調べるために、修道院内部をあちこちまわっていた。
「しかし……さすが修道院。この世界でも最新の機材が揃っているとは。
とはいっても大したものはないけど……。あるもので何とかするしかないか。
様々な技術などは、修道院が先進技術の発展の場所でもあり、医療、病院もそのルーツでもある。この世界、というか修道院は医療の最先端の場所ではあるが、外科手術などの技術などは流石に存在していない。
だが、俗にいう薬草に関しては修道院はまさに最先端といえるだろう。
バラ、ユリ、セージ、ローズマリーなどの香草や植物は、頭痛や腹痛などの内的合併症に使用した。アーモンドは睡眠補助や排尿促進、月経誘発に効果があるとされていた。
こういった薬草の技術などは、連綿と続く経験則から言って知識・技術を蓄えていた修道院の最大の資源ともいえるものだ。実際、修道院内部にも様々な薬草や香草など薬になる草が大量に存在していた。
エルは、そこに対して目を向けることにした。特に彼が目をつけたのは、バラ、ユリ、セージ、ローズマリーなどの香草である。
まずは、エルは修道院長に話を伺い、蒸留器を購入できないか、と相談する。
蒸留器といえば、魔術師、錬金術師が使用する器具。そんなものは却下されるかと思っていたが、いともあっさりと許可が出た。
元々、修道士もリキュールや薬草作成のために蒸留器を多用するため、それ自体には問題ないらしい。ともあれ、蒸留器が手に入ったのなら、やるべきことは一つである。
それは、まずは『香水』を作ることである。
王都の貴族たちの男らしい男たち……つまりは家にこもっている男たちは、女性騎士たちの気を引くべくために、香水や女性の目を引く衣服を多用する。
どちらかというと香水を好むのは女性であるが(貞操逆転世界でもそれは変わらない)その女性の気を引くために、彼女たちが好む香水を身に着けるのは貴族階級の男性たちのセオリーになっている。
そのため、常に香水の需要は王都では求められている。そこにつけこんで金を稼ごうというのだ。
実際、エルも女性騎士から山のような香水を送られてうんざりしたこともある。
「そんなことしている暇があったら、前線の騎士たちに武器や何やらを与えればいいのに……。」
とエルは思わなくもないが、騎士たちからすれば、好みの異性をゲットするために戦いに奮起するのは古今東西同じである。騎士たちを奮起させて戦う士気を高めるためなら仕方ないか、と納得する。
エルは、他の修道士たちと協力して、大量のバラやローズマリー、ユリなどを用意し、まずはバラの花びらを大量に摘み取って、水蒸気蒸留器を使用する事によってバラ精油とバラの芳香を持つ芳香蒸留水、バラ水を作り上げる。
この作り上げられたバラ精油を香水として使用し、バラ水も肌にいい化粧水として販売するのが、エルの考えである。
ほかにもローズマリー精油や、ユリ精油も作り出し、これらも香水として利用して売り出していく。
そして、次に作るべきは、この香水を利用でき、しかも心身の清潔に使える物。
つまり石鹸である。
鍋に木の灰と水を入れて灰汁を作り、そこに生石灰を入れる。さらにそこに、溶かした羊の脂肪と塩、小麦粉を冷たい灰汁を少し混ぜ、麻の布でろ過して、そのでんぷんを小さい鍋に入れて、鍋の底が見えなくなるまでさらによく混ぜる。
これに香水などを混ぜていい匂いがするようにして固めれば石鹸の完成である。
「よし、香水と石鹸作成は完了した。あとはこれをできる限り高く貴族たちに売りつけないとな……。」
そのために利用するもの、それは実家の公爵家という権威そのものである。
そう考えたエルは、手紙と共にさっそくこれらを実家のバルシュミーデ家に送ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます