第14話 病院独立騎士修道会結成!

「……さて、現状のここ近辺の状況だ。」


 何とか落ち着いた修道院長クラリスは、彼女たちが帰った後で現状の辺境の状況を開設する。情報をまとめると、アリシアは王家の血を引く騎士であり、エレオノーラはその補佐、そして、あの女性騎士たちもその配下の騎士だったらしい。

 だが、辺境近辺の狂魔との戦いによって部隊はほぼ壊滅。生き残った彼女たちは手酷いトラウマを負い、アリシアとエレオノーラは精神崩壊、そのためその傷を癒すために修道院で酒池肉林を行っていたらしい。

 詳しい戦況を聞いても、実質素人であるエルからしてみても戦況が良くないのが理解できる。王都近辺にまでちょくちょく出没しているとのことだ。


「……ちょっと待って。そこまでこちらの戦況がよくないの?」


 この国では狂魔の浸食があちこちで行われているとは聞いているが、貴族とはいえ男性である彼に戦争の情報はあまり入ってこない。

 戦争、戦いはあくまで女性の物である、というのがこの国の考えである。そのため、彼女の母親も息子に戦争の事など詳しく教えずにシャットアウトしていたのだろう。

 修道院長もそんなに詳しくはないだろうが、騎士との触れ合いがあるため多少は情報を知っているらしい。


「ええ、あちらこちらで散発的に狂魔の出現が行われ、騎士団はどんどん消耗し、損失されていく。あのアリシアたちの騎士団も同様だ。騎士たちの消耗を何とか癒し、戦力として再編していく。それが我々のやるべきことだな。」


 つまり、狂魔たちが国内にゲリラ戦のように散発的に出現し、騎士団はその防衛で手一杯、というか手が回り切れていないらしい。

 その影響で滅んでいる村も存在し、市民や農民たちにも被害が出ている。


「そんな状況になってるなんて……貴族なのに知らなかった自分が恥ずかしい……。ともあれ、状況を調べないと。」


 そんな状況を聞いて、彼の中の人を救いたいメサイアコンプレックスがみるみるうちに噴き出してきた。狂魔によって多数の人々の命が失われている。それらを救わなくてはならないという使命感がみるみるうちに噴き出してくる。

 しかし、彼は男性である。男性は戦争に関わるなどもっての外!男性は大人しく女性騎士の三歩後ろを歩き、家庭を守っていればいい、というのがこの世界の常識である。そんな中に剣を振りかざしていっても、圧倒的戦力やら天才的戦略の才能でもない限り白眼視されるのは当然だ。

 と、なれば、女性騎士たちをこちらに取り込んで戦力にしていくのが一番である。


「で、提案があるんだけど、この騎士たちを修道院所属の騎士にしたいんだけどいいかな?まずは騎士たちを集めないと。」


「そうだな、この教会やアンタの護衛にちょうどいいかと。騎士の引き抜きはアンタの家の力を借りればすぐすむでしょう。」


 エルの家は、泣く子も黙る公爵家である。その力を借りれば、騎士を他に移動させるなど容易い事だ。元々、敗残兵の残りを取り込んだだけだ。エルの護衛にしたいとでも言えば喜んで行うだろう。


「まあ、正式な許可を取ってないから仮という形になりますが……『病院騎士修道会』とでも名乗っておけばいいでしょう。修道院付きの騎士戦力という形なら国家も他の騎士たちも納得してくれるはず。まずはそういう風な騎士修道院を作る形でいいくとするか。」


そのクラリスの言葉に、エルは大きく頷いた。


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