第1深層-2
この家は廊下が輪のように繋がっているようだ。
扉を片っ端から開けてみる作業に疲れ、廊下に掛けられている鏡に振り返る。
「鏡さん、扉を開けるにはどうしたら良いんですか?」
『鍵は秘め物を秘めるためにある。君が秘めたくなくなった時、扉は開かれる』
鏡に答えを求めるのを諦めて次の扉に手を伸ばした。ノブを回して、扉を引く――扉が、小さく音を立てて、開いた。
見覚えのある部屋に入る。ドレッサーの近くに置いてあるオルゴールを開けようとして――手を止めた。あの影が音に敏感なら、私がここにいることに気付かれてしまうかもしれない。他の物を調べよう。
本棚に目ぼしい物はない。机の中は空っぽ。ベッドの下にもなにも誰もいない。
オルゴールの近くに置かれたアクセサリーケースに手を伸ばした。中はイヤリングばかりで特に気になるのはない。蓋を閉じようとした時、凝った装飾のなにかが目に入った。
「これ――鍵だ」
私は鍵をポケットにしまい、もう一度部屋の中を見回す。ふと気になってベッドに向かった。
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