お妃さまと離別

 お妃さま お妃さま。


 私に泣いてすがるお妃さま。


 貧しい国を、飢える民を救い上げる力はあなたの嫁いだ王になく、膨れ上がった怒りの矛先を一身に受けることになったお妃さま。


 あなたが『ささやか』と呼ぶ食事のひとかけらも口にできずに死んでいく民の、怨嗟と呪詛からなんとしても家族を護りたいと願ったお妃さま。


 私の手を握り、私との別れを惜しんで、私の用意した馬車に乗り込んでお逃げになったあなたに、私はようやくすべてを終えた感慨に包まれました。


 お妃さま お妃さま。


 扇の隙間から見た荒れた大地よりも、家族との日々を選んでしまったお妃さま。


 私はあなたが最初から気づいてことに、最初から気づいておりました。

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