『極秘任務』
後日、日継小隊の彼女たちは、司令官に呼ばれていた。
「わざわざ来てもらって悪い、君達には私から直接話をしたいと思っていたから」
彼女はそう言うと、なかなかと話が続きそうだと悟ったアイギスは先制して、単刀直入に司令官に聞く。
「司令官、私たちを呼び寄せた理由とは一体何ですか?」
眼鏡を調整しながらアイギスは言うと、その言葉に司令官は頷いた。
そして、立ち上がり外を眺める。
窓から先にあるのは、この建物を覆う壁とその先にある一面の焼け野原だった。
現在戦争が行われている。
彼らの相手は人間ではない。
機械生命体と呼ばれる地球外からこの地球の物資を略奪しに来た、侵略者であった。
「これは君達にしか頼めない極秘の任務である…今回君たちはその任務に適正があると思った為に、こうして呼び寄せた」
彼女たち。
この司令官室へと足を踏み入れているものは、戦争によって、肉体を改造した兵士であった。
重苦しい表情をする司令官に対して何か危険な任務が与えられるのであろうとそう思ったレディノヴァとシャルルに対して、アイギスは平然とした様子で司令官に言う。
「そうですか、前置きは結構ですので、本題の方に移ってください」
恐怖など微塵も存在しない、彼女は根っからの兵士であった。
「ではそうするとしよう、今回、君たちに頼む任務とは…」
そう言いながら、隣に立つポニーテールをした女性に目配せをすると、女性が軽く会釈をしながら、すでに手に握りしめていた1枚の紙を開いた。
その紙は写真であった。
彼女たちならば、誰もが理解出来ている小隊の隊長の姿が、そこにあったのだ。
「最強の英雄、日継零児の、遺伝子を、体内に取り込むのだ」
その言葉を聞いて沈黙が訪れる。
2秒ほど時間が経過して沈黙を破ったのはやはりアイギスであった。
手を上げて、発言の許可を取ると彼女は、司令官に向けて言った。
「おっしゃる意味が分かりませんが…」
その言葉に対して司令官は頷く。
「そうか、確かにこれでは伝達不足かもしれないな、では噛み砕いて説明をしよう」
不可解な内容だと微塵も思っていないらしい。
自分の口にした言葉が、説明不足だと思ったのか、軽く捕捉するように説明を開始した。
「今からお前たちは
内容が多少わかりやすくなったがしかしその意味がわからない様子で、アイギスが噛み付くように、突っ込む。
「噛み砕いて言われても全く分からない説明なのですが」
彼女の問いかけに対して、司令官は一から説明することにした。
「お前たちは、隊長である
この機械生命体と戦争をすることとなり劣勢となっていた戦況においてただ一人の兵士を導入したことで状況を一変させた救国の英雄である。
その
「それはもちろん、私は、日継様に我々は何度も何度も命を救われました」
うっとりとした眼差しで、シャルルは
そこでレディノヴァも発言をするのだが、彼女は真っ白な、肌を紅潮とさせていて視線を泳がせながら必死になりながらも、言葉を紡がせる。
「素敵な殿方だとは思いますが、その、どうして、あの、エッチな、ことをするの、ですか?」
そんな彼女に対して不謹慎だと言いたげに表情を強張らせながら司令官は、レディノヴァに対してキツめな口調で叱咤する。
「貴様、これは決してエッチなことではない、この作戦を、性的なことだと考えている貴様の思考回路がスケベなのだ、反省をしろ、むっつりスケベめが」
そのように言われて、彼女は余裕が無さそうに必死になりながら否定した。
「私はそんな、エッチな、女ではありません!」
そのようなシレディノヴァの言葉に対して司令官は、どうでも良さそうな表情をしていた。
「スケベかスケベではないかなど、どうでもいいことだ、それよりも話を戻す、お前達に行って欲しいこと、それはこの現状、機械生命体との戦いが続く時、この国は現在、機械生命体で作り上げた機械を使って戦争をしている」
この世界、侵略者である機械生命体。
その圧倒的強さを誇る、生物ではあるが幸いなことにその肉体は機械でできていた。
人間の技術を200年先まで入っているようなその緻密な肉体構造に対して人類はわずか15年で解析を行い、その技術を、軍事利用し、兵器として、転用したのだ。
「奴らのお陰で我々人類は窮地に陥ったと同時にやつらの死骸を使って、200年先の技術を手に入れることができた。そうして我々は機械生命体と戦いを繰り広げるために、機械生命体討伐機関を作り上げた…それがここだ」
その結果人類は機械生命体と渡り合える戦闘力を身につけて現在まで機械生命体と人類の戦争が続いていた。
数多くの肉体改造を行い兵士となった人間の中でも、
「この数年、
機械生命体に侵略された人工島の奪還から始まり、地球に設置された機械生命体の工場を完全破壊。
窮地に追いやられた情報部隊を救済した挙句彼らの殲滅を目的とした、数百体の機械生命体を単独で撃退し退けることができた。
その存在はまさしく生きる伝説と呼ばれるものだった。
「そんな、
司令官はそのように思っている。
「だが
クローン技術はもちろん存在するが、それをあまり利用することがなかった。
倫理的問題というわけではなく、単純に、コピーしたところで生まれるのは、劣化品に過ぎなかったからだ。
「クローン技術で生み出したコピー品は成長促進剤を使って強制的に肉体を成長させているからだ、なのでせっかくコピーを作ったとしても戦場では多く活躍することは難しいだろうし、なによりもコストがかかる、そうして、人工知能による計算をした結果、実際に子供を作って育てた方が、
司令官は興奮気味にそう言った。
人類が勝利へと導くシナリオができたからこその興奮ではあるのだが、少女たちにとっては別の意味での興奮かのように見えた。
「その人工知能、ネジがぶっ飛んでいるのでは?」
鋭いツッコミを入れるアイギス。
「そして
人工知能が導き出したその結論。
三人は交互に目を合わせていた。
「ついでにここに集まった3人は
彼女の密かな恋心は全て筒抜けであるらしい。
「もう一度言うが、これはキミたちにしか出来ない。優秀な性能を持つキミたちにしか、出来ないことだ。この国の未来の為に、どうか頼んだぞ」
司令官は、彼女たちに、そう言って任務を託すのだった。
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