第四章 影の中で 4
4
曇天の空が、宮瑠璃市を覆っている。
静星乙羽は、怪物特有のスピードでハサミ女を連れ、伊瑠々川の川岸にやってきた。周囲には誰もいない。儀式にはうってつけだ。
「千恵里を下ろせ」
三原稲に憑りついたハサミ女に命じる。霊体となった少女が乱暴に放り投げられる。静星は、そんな事は意にも介さず千恵里の傍まで歩み寄る。
「よくもまあ、今日まで現世に留まっていたものだね。千恵里ちゃん」
怯えてレインコートのフードを深く被った少女は何も答えなかった。言葉の意味が理解出来ていないのだろう。理解出来ていなかったからこそ、今日までこうしていられたとも言えるが。
「さあ、千恵里ちゃん。お役目を果たしてね」
静星は優しくレインコートの上から千恵里の頭を撫で付ける。千恵里は震えたままだ。静星の中に苛立ちが湧いた。
――こいつ、まだ生きているつもりでいやがる。
「思い出せ。真実を」
震える少女に、静星は耳打ちする。
「思い出せ。痛みを。恐怖を。あの瞬間を」
言葉の一つ一つに呪詛が込められている。ゆっくりと、少女が真実から目を背けるためにかけたヴェールを剥がすように、静星は彼女を呪う。
「カッ、カッ、カッ、カッ」
ハサミ女が好きな、ハサミを打ち鳴らす音を口真似してやる。
少女の震えが、いっそう激しくなる。
「…………さみ」
少女が、何かを言った。
「はさみはさみはさみはさみはさみはさみはさみ!」
「そう、そうだ。ハサミだよ。お前はそれで何をされたんだ?」
静星は静かに囁いた。
「お前は、殺されたんだよ。十年前に、ね」
震える少女が、ぴたりと止まる。
ひどく傷つけられた顔が、静星を見る。静星はただ微笑むだけだ。
少女の視線が、自分自身の手に落とされる。
切り傷だらけの、痛ましい両手。静星は、己の呪詛が成った事を確信した。
雨が降り出した川岸に、少女の絶叫が木霊する。
「ほう、ほう、ほたるこい。あっちのみずはにがいぞ。こっちのみずはあまいぞ」
静星は童謡を口ずさむ。絶叫する少女の霊を、ハサミ女が頭から飲み込んでいく。
これで呪われた霊魂が三つ揃った。予定よりも触媒の数が少ないが、まあ問題はない。
「掛けまくも畏き伊瑠々弥無伽主の大前に畏み畏みも白さく――」
静星が呪詛として作り上げた呪文を唱える。ハサミ女がハサミを地面に突き立て、伊瑠々川へと入っていく。この儀式に呼応して、街中に仕掛けられた呪いの断片が次々と発動する。この日のために、あちこちで我留羅を呼び覚まし、街を不安定にしておいたのだ。
川の水にハサミ女が足をつける。すると、川の水に溶けるように、ハサミ女の足が見えなくなっていく。見上げれば空が、血のように赤く染まっていた。ハサミ女はすでに、頭が川の中へと消えていくところである。
伊瑠々川が、真っ赤に染まる。血の如き赤に。
「さあ、お待ちかねの時間だ」
自分の血が、海のように広がっていくのが見える。
煌津は、もはや自分の命が残りあと数分であろう事を自覚していた。
無理だった。自分では。那美の助けにも、九宇時の代わりにもなれない。三原稲も救えない。千恵里も救えない。あまりにも急ごしらえで、あまりにも無謀過ぎた。何も出来ない。誰かを助ける事なんて、出来ない……。
「うっ……」
痛みに、身をよじる。転がった床の向こうに、銀色に光る物が見えた。
リボルバーだ。同い年の女の子の手にはあまりにも不釣り合いな、危険な武器だ。
だが彼女は、この銃で、煌津を何度も助けてくれた。
「はっ、はっ、はっ……」
血が抜け過ぎていて、体に力は入らない。だが、何故か。自分でもよくわからないが、煌津は剣を杖代わりにして立ち上がろうとしていた。
何故だ? 自分の命はあと少しだというのに。今さら、何が出来るわけでもないというのに。
『退魔屋っていうのは……』
思い出す。自分が言った言葉を。あの時、彼女が言った言葉を。
『人を助けるのが仕事なんだね。生きていても、死んでいても』
――彼女が、答える。
「はっ、はっ、はっ、はっ、ぅ、おお――」
ぼたぼたと血が滴り落ちる。煌津は剣を支えにして、ずり、ずりと床を進む。
銀色のリボルバーを掴む。震える手で、ポケットに銃身を突っ込む。
――何かが、体の中を走った。一瞬、赤い線が見える。
『消そうと思えば消せるけどね。今の俺でも』
あの頃、交わした会話が脳裏に蘇る。
『消したほうがいいかい。穂結さん』
「――……いいわけない」
青い線が、体内に走る。緑の線が神経に走る。
よろよろと、煌津は立ち上がっていた。出血によるおぼつかない足取りで、少しずつ歩き出す。
長椅子の瓦礫の下に、それはあった。埃塗れなっているが、壊れてはいない。
変身と書かれたラベルに触れる。真っ赤な血で、白いラベルが汚れてしまう。
赤、青、緑。様々な色の線が、煌津に集まってくる。
「こんな事になって――」
すぐ傍で、誰かが言った。
「後悔しているかい。穂結さん」
懐かしい声が、聞こえる。少し前までは、聞こうと思えば聞けていた声が。
「……していない」
振り返れば、そこにいるのはわかっている。だが体が痛くて、自由には動けない。
「行かなくちゃ……。静星さんを止めないと」
「仮に世界が滅ぶなら、それも運命だとは思わないかい」
九宇時那岐の声が、そんな事を言う。
「それは命を賭けてまでやる事なのかい。穂結さんが傷ついてまで、やらなければいけないのかい」
その問い掛けは、今この場だから出てきたものなのか。
それとも、彼がずっと抱え続けてきたものなのか。
「誰だって、無理矢理境界を越えさせられたら嫌だろう」
煌津は、答えた。
「俺はまだ、やれる事があるみたいだから。もう少しこっちに居てみたいんだ、九宇時」
九宇時那岐は、何かを言いかけて、一呼吸置く。
「立派な選択の全てが正しいとは限らない。穂結さんの進む道は、きっと傷つく事ばかりだよ」
「……いいよ。それでも」
貫かれた腹が痛む。でも、それでも、行かなければ。
「辛かったら、泣き言言いに行くよ。あの時、記憶を消さなかった事、俺は後悔していないから」
後ろにいた人物が、ふっと笑った気がした。
「那美の事、迎えに行ってあげてくれ。そこからの道は用意してある」
ぽん、と肩を叩かれた。
「よろしくね。穂結さん」
――――意識が、戻る。
「はっ!?」
気が付くと、体の痛みは完全に消え去っていた。傷も見当たらない。目を閉じれば、魔力が循環しているのがわかる。ポケットには那美のリボルバー、右手には剣、左手にはビデオ。
そして正面には、エネルギーの渦巻くゲートがある。
「九宇時さん……」
煌津はゲートの中へと駆け込んだ。魔力で出来たトンネルの中を走り抜ける。
ゲートは、あだむの世界へと繋がっていた。あだむの家の前で、血だらけの那美が倒れている。
「九宇時さん!」
駆け寄り、声を掛ける。衣服は斬られていたが、傷は見当たらない。出血していたようだが、魔力によって治癒させられたのだろう。
那美を抱き起こすと、彼女の目が開いた。
「穂結……君?」
「良かった……」
前方で、魔力の弾ける音がする。見れば、新たなゲートが生まれるところだった。あれが恐らく、静星の元へ通じているのだろう。
「九宇時さん、後ろのゲートから病院に行ける。俺は静星さんを止めに……」
「何を……言っているのやら」
煌津の肩を借りながら、那美は立ち上がった。
「最後まで行くに決まっているでしょ。私は、この街の退魔屋なんだから」
どうやら、止めても聞きそうにない。
「オッケー。それなら、これ」
煌津はポケットのリボルバーを見せた。那美は頷き、抜き取る。
「ありがとう。穂結君」
「行こう。静星さんを止めるんだ」
那美に肩を貸したまま、煌津は前のゲートの中へと進んだ。
宮瑠璃市宮瑠璃駅の駅前は阿鼻叫喚の渦となっていた。
血のように真っ赤に染まった視界の中で、黒い人影がそこかしこに点在している。建物の中に逃げても無駄だ。『彼女』は、今やどこにでもいた。
――ハサミ女。
あの大きなハサミを手に持ち、まさしく幽鬼の如くゆらり、ゆらりと動いている。目が合えば、恐怖で心を潰される。かといって目を閉じれば、いつ、あのハサミが襲ってくるかもわからない。
何より恐ろしいのは、赤い霧の中で遠くに見える巨大な影。
宮瑠璃市は、巨大なハサミ女に見下ろされていた。
ゲートを通ってたどり着いたのは、伊瑠々川の川岸だった。
視界は赤い靄のようなものに覆われている。街のほうはもっと濃い。さながら赤い霧だ。川のほうには、さらにとんでもないものがあった。
「何だ、あれ……」
巨大なハサミ女だ。赤い靄のほんの切れ間から僅かにハサミ女の長髪が見えるが、その全容はようとして知れない。
「これが、静星さんが言っていた街を満たす呪詛……」
「この靄、全てが呪力だよ。このままだと一時間ももたずに、異層転移が始まる」
那美は煌津から離れ、川岸を探った。
「……いた」
小さく呟く。煌津も見つけた。川のほとりに立つ、静星の姿を。
走り出す。那美が少し遅れるが、すぐに並ぶ。河原を蹴る音がすると、静星がこちらに振り向いた。
「おやあ? 先輩方」
リングをくるくる回しながら、静星が近付いてくる。その手にはハサミ女のハサミも握られている。
「まさか。あれだけの傷を受けて生きているとは……。宮瑠璃市の魔力ネットワークを少し甘く見ていましたかねえ」
「呪いは完成させない。君はここで止めるよ、静星さん」
ふん、と静星は鼻で笑う。
「なるほど。確かに全快したお二人なら、わたしを止められるかもですが」
くるくると回したリングを、静星は一度上に打ち上げてキャッチする。目つきが、ひどく凶暴になものになる。
「馬鹿にするなよ。勝てる気か、この呪詛の海の中で」
「勝つしかない。勝たなきゃあなたを止められない」
くるくると、那美はリボルバーを回し、
「穂結君、行くよ」
「ああ」
煌津は、ビデオテープの裏側の穴に指を引っ掛けて軽く回した。右手で回転を受け止め、腹部に出現させたビデオデッキの中に挿入する。
魔力が全身に満ちる――
「「退魔屋チェンジ!」」
二人同時に叫ぶと桜色の光と、赤い光が川岸に溢れる。【
巫女装束に桜色の魔力を纏わせた那美が、リボルバーを構える。
「
静星が、那美を睨み付ける。そして、
「穂結先輩、その姿のお名前は?」
煌津は剣を構えた。
「ビデオマン。俺の事を呼ぶなら、そう呼んでくれ」
「ビデオマン……なるほど、ビデオで変身するからか」
納得したようにうっすらと笑みを浮かべて、静星はリングを空高く放る。
「呪術師チェンジ!」
黒い靄が立ち込め、静星の体を覆う。
「ならばわたしは、サターン・レディとでも呼んでもらうか!」
言いざま、黒い靄を払って、死角から静星が大ハサミを振るう。天羽々斬で受け止めるが、その瞬間には、リングの横薙ぎが煌津を襲う。
「穂結君!」
那美の声を合図に煌津が飛び退くと、同時に銃声が轟いた。静星がにやりと笑った。スーツの背中から赤い腕が生えて大ハサミの持ち手を掴み、銃弾を叩き落とす。
「ハサミ女の能力……!」
「それだけじゃない」
地響きとともに、地を割って現れたのは、巨大なくねくねモドキの群れだ。静星は現れたくねくねモドキを蹴って、頭上から攻撃を仕掛けてくる。
「絡み付く包帯!」
左手から射出した包帯が、静星の体に纏わりつく。静星の体から、さらに赤い腕が生えた。その手に持っているのはカッターや、包丁だ。それらがあっという間に、絡み付く包帯を切り刻んでしまう。
「フジバカマノヒメ、ハゼランノヒメ!」
二体の式神を呼び出し、那美は静星を追う。巨大なくねくねモドキはさらに数を増し、赤い靄と相まって視界を狭くする。
「そらっ!」
くねくねモドキの影から出現した静星が、伸縮しるサターン・リングを伸ばして煌津の顎を狙う。煌津はくねくねモドキを蹴ってこれを躱し、お返しとばかりに影からの奇襲攻撃で静星を打つ。
「ははっ! はははっ!」
静星が、心底楽しそうに笑っていた。
「これ! これだよ! こういう戦いこそ、わたしが求めていたものなんだ!」
赤い腕が伸びて、大ハサミをはじめとした刃物の群れが煌津を追ってくる。右手に気を集中し、念じる。右手のグローブの模様から出た炫毘の火が、天羽々斬に燃え移る。
「ふん!」
炫毘の燃え盛る剣を一閃すれば、赤い腕の数々が燃え落ちた。
「いいねえ、やるじゃない! ビデオマン!」
大ハサミの猛追撃が襲ってくる。煌津は剣で打ち合い、忍び寄るリングの一撃さえ弾いて見せる。
「すごい! 本当にすごい! 頑張ればわたしを倒せるかもしれませんよ、先輩!」
「――静星さん、楽しそうだね」
打ち合いを制し、煌津は少し離れたところに着地する。
静星は上機嫌そうに答えた。
「当たり前じゃないですか、先輩。楽しいに決まっているでしょ、こんなギリギリの戦い!」
煌津は剣を下げて、静星の目を見つめた。
「静星さん、どうして俺たちの事をずっと先輩と呼ぶの?」
静星は怪訝そうな顔をした。
「急に何を言い出すんですか。先輩は先輩でしょう。ほかに呼び方なんて……」
「ずっと引っ掛かっていたんだ。静星さんの様子が」
「様子?」
煌津は頷いた。
「手段を選ばずにやれば、君はもっと簡単に俺たちを殺せていたはずだ。なのに君は、回りくどい手段で何度も俺たちを試していた。直接会った時でさえ、不意打ちでいくらでも殺せただろうに、君はあくまで直に戦う事を選んだ」
「何を……だって、それはそのほうが楽しいからで……」
「それだよ。静星さん、君は――」
静星の顔が、どこか追い詰められたような表情をしていた。
「ずっと遊んでいたかったんじゃないのか。学校の後輩として、先輩たちと」
「違う! わたしは、あくまであんたら格下を試しただけで」
「なるほどね」
那美が、くねくねモドキの影から現れた。
「私たちの事を先輩と呼び続けるのも、遊びの一つ。あなたはずっとごっこ遊びをしていたかったんだ。戦いごっこに、後輩ごっこを」
那美の目が
「呪術師ごっこも、ね」
「違う! 全然違う!」
まるで駄々っ子のように、静星は唾を飛ばして叫ぶ。
「わたしはこの世を呪ってやるんだ! この世界を呪ってやるんだ! わたしを見捨ててのうのうとのさばっていた奴らに思い知らせてやるんだ。怪物になって、この世界を滅ぼしてやるんだ!」
「そんなの出来ないよ。だって……」
煌津は、一歩静星に近付いた。
「君は今も、人間でいたがっているんだから」
「違う! 違う! 違う! わたしは呪術師だ! もう人間じゃない。人間になんて、戻りたくもないんだ!!」
静星は泣いていた。そこにいるのは、サターン・レディでも、呪術師でもなかった。人間として生まれて、人間として傷つき、そして人間ではないものになってしまった、ただの女の子だった。
「わかった。サターン・レディ」
炫毘の燃え盛る剣を、煌津は静星に向ける。
「終わりにしよう。君が背負ってしまったものは、俺が祓う」
「やってみろ。やってみやがれ。ぽっと出の退魔屋モドキが、このわたしに敵うと思うなよ」
静星が、構えた。突進の姿勢だ。煌津も同様に構えた。
――静寂。
次の瞬間、煌津は動いた。黒い靄を噴出させながら、静星も突っ込んでくる。
ガン! 金属と金属が噛み合い、大ハサミが宙を舞う。
「まだだ!」
静星が振り向きざまの一撃を狙う。煌津はその一瞬のタイムラグを逃さなかった。
煌めく炎の剣が、静星の胴体を突き刺した。黒い靄となって躱す事の出来ないタイミングだった。
「あ……」
静星が、小さく声を上げた。
血は流れない。出るのは呪力である黒い靄だけだ。
那美が、煌津が剣の柄を握る手に、そっと自分の手を重ねた。
「穂結君」
言われなくても、何をするかはわかっていた。
那美の凛とした声に、煌津は合わせる。
「「掛けまくも畏き伊邪那岐、伊邪那美大神の大前に畏み畏みも白さく、諸の罪、穢れ、禍事に囚われ、我留羅と成りし魂魄を憐れみ給い、慈しみ給い、導き給え。セイ、ジン、チ、ジャ、タイ、ウン、メイ――」」
静星の目が、煌津を見た。涙を流し続けた女の子の目が。
「「ぐるりぐるりと」」
静星の体に、ぼうっと、炎が灯った。
静星だけではない。無数に屹立するくねくねモドキ、巨大なハサミ女の体にも炎が灯る。
「おめでとう……ございます。先輩。勝てましたね」
音も立てず燃える炎の中で、静星乙羽は言った。
「これで呪詛は消えますよ。良かったですね。嬉しいでしょう?」
嬉しくはない。安心したのはそうかもしれないが、嬉しいとは違う。そう言おうとしたが、静星の顔を見ていると何も言えない。
「一生続く戦いの始まりです。せいぜい頑張る事ですね。わたしは……」
静星は、笑った。
「一足先にお休みします」
そうして、静星乙羽は炎の中で消えた。
くねくねモドキを燃やしていた炎が消え去ると、赤い靄もまた晴れていた。
河原の風景は、いつもとどこも変わらない。
「穂結君、あれ!」
那美が、川のほうを指差した。見れば、三原稲が川のほとりに流れ着いていた。
煌津は包帯を伸ばし、稲の全身を包帯でくるんで、自分の傍まで寄せた。
「吸い取る包帯――」
稲をくるんだ包帯が、たちまち水分を吸い上げ始める。これで彼女の体が冷える心配はない。あとは病院に連れて行かなければ。
西の空に夕日が落ちつつあった。灰褐色の雲の間に見える夕日は、平穏とも不穏とも言えない気持ちにさせた。
「まだ終わっていない」
那美が言った。
「静星乙羽が呼び出した我留羅は、まだ全部見つかっていない。それに今日の一件で、何かほかの影響も出ているかもしれない。調査をしないと」
「一生続く戦いの始まり……」
静星が言った事を、ふと言ってみる。
「怖くなった?」
からかうふうでもなく、静かな口調で那美は問う。
「いいや、やるよ」
これは九宇時那岐が通った道でもある――……
「本当にいいの? 先に待つのは後悔だけかもしれない。我留羅との戦いで死ぬかもしれない。ちょっと腕に覚えがあるだけの素人として生きているほうが、ずっと楽なんじゃないの?」
「出来る事があるのに、やらないままでいるのは良くないよ。心霊現象なんて、身近にあるものなんだし」
煌津は三原稲を両腕で抱えて立ち上がる。
「魂ある者全て。闇から救う」
ふと、煌津はすぐ傍に千恵里の気配を感じた。
ぐるりぐるりと 安田 景壹 @yasudaichi
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