お花を育てましょう

@tonari0407

世界にひとつだけの花

「とっても可愛いっ」

「こっちのは繊細だなぁ 」

「なんだか癒される~」


 ちいちゃんはお花をみるのが好きでした。


 色とりどり、大きさも様々。

 みていると、とっても楽しい!


 同じ色でもよ~く見ると全然違うんです。


 角度を変えてみると、キラキラと色を変えます。たまに深い色に驚きますが、ダークな一面も魅力のひとつです。好みのお花は何度も飽きずに眺めます。


 心ときめく素敵なお花を見つけると、ちいちゃんは育てている人に感動を伝えるのでした。そうするとニッコリと笑顔のお花も咲くのです。


 ちょっぴり悲しいのは、成長が止まったお花。そこだけ永遠の時間に閉じ込められたような姿はまるでプリザーブドフラワー。

 そういうお花には、ちいちゃんは「キレイだね。ありがとう」と声をかけながら、またお花が大きくなる日が来ることを願うのでした。



 ある日、ちいちゃんは『お花の種』を見つけました。最初は戸惑いました。誰かに渡して育ててもらうことも考えます。


 迷った末、ちいちゃんはお花を自分で育ててみることにしました。


( 私にはどんなお花が育てられるだろう? 咲いたところをみてみたい! )


 ちいちゃんは好奇心をおさえられなかったのです。


 種を埋めて、お水をあげて眺めます。


 ( どんな色かな? 大きさは? どんな人に気に入ってもらえるだろう? )


 ワクワクしながら毎日お世話します。

 しかし、その種はなかなか芽を出しませんでした。


 お花の芽がようやく顔を出したとき、ちいちゃんはとっても嬉しくなりました。お水をあげたらあげた分だけ、ひょろひょろと伸びていきます。


 その姿はちょっとブサイクです。

 それが気にならない程、ちいちゃんは自分のお花が愛しくて咲くのが楽しみでなりません。


 ちいちゃんのお花は誰にもみてもらえませんでした。

 誰からも「かわいいね」と言ってもらえませんでした。


 育てることが楽しくて、ちいちゃんは汗をたらしながら懸命にお世話します。



 ある日、お花は葉っぱを枯らし、頭を垂れてしまいました。小さなつぼみはかたく閉じたままで開く気配はありません。


 ちいちゃんはどうしたらいいか分からなくなって、必死に本を読みあさりました。


 土のたがやし方、肥料のあげ方、お水の量、日あたりなど、自分でできる思いつく限りのことをしました。


 すると何とかちいちゃんのお花は持ち直して、小さな花を咲かせました。


 茎はへにょへにょ。

 葉っぱは元気がなく色もうすい。

 花びらは小さくくすんだ色をしていました。


 当然ながら誰にも見向きされません。



 ちいちゃんは自分が愛情をかけたお花が大好きです。自分の育て方が悪かったのかなと心配になりました。


 だから決心をしたのです。

 それは、育て屋さんに会いに行くこと。


 育て屋さんは、お花に対する率直な意見をくれる人です。キツイことを言われるかもしれません。落ち込んで立ち直れない人もいると聞きます。



 ちいちゃんは勇気を出して育て屋さんのお家に行きました。


「どうぞ。おやおや?  なんだい、そのへたれた花は」


 その言葉だけでちいちゃんの胸は張り裂けそうでした。それでもお花を輝かせるためにちいちゃんは怯みません。


「これは私の大事なお花です。もっともっと魅力的なお花にしたいから助けてください」


 すると育て屋さんは注意事項を教えてくれました。


・個人の意見だから必要以上に傷つかないこと

・育て方に正解はないこと

・最終的にどうするかは自分で考えて決めること


 ちいちゃんは納得した上でお花をみてもらいました。


 その結果は……少し辛いものでした。



 育て屋さんは本当にじっくりとちいちゃんのお花をみてくれたのです。ちいちゃんが知らないお花の一面を教えてくれました。


 何に気をつけて、どんな気持ちでお花を育てたかをちいちゃんは伝えました。育て屋さんも知りたいかなと思ったからです。


「ありがとうございました! 」


 育て直したお花をまた見せにくることを約束して、ちいちゃんは力強く歩き出します。


 育て屋さんの顔は疲れていました。

 自分のお花を育てる時間を削って、ちいちゃんのお花をみてくれたのです。

 キレイなお花は他にたくさんあるのに、ちいちゃんの気持ちをくんで頑張ってくれたのです。


 ちいちゃんは育て屋さんに感謝していました。そして、お花を育てている人はみんなすごいなと思いました。




 今日もちいちゃんは一生懸命お花を育てます。

 注目されなくても、賞をもらえなくても、褒められなくても、いいんです。


 育て親の自分の満足いく形でお花が咲いたらいいんです。



 みんな世界にひとつだけのお花。

 変わりになるものはありません。


 さぁ、楽しくお花を育てましょう。

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