第7話

 ぞろぞろと冒険者達が階段を降りていくと、一つの真っ白な空間があった。


「私、リステアが宣言します。この第6階層は安全地帯(セーフエリア)とし、争いごとを禁じます。その代わりに皆さんが必要とするものを作りたいと考えます」

「おい、何でもいいのか?」

「可能な限り」


 冒険者達は、戸惑いながらも要望を出していった。宿屋、病院、武器・防具店、道具屋、食堂、死体安置所、酒場と『あったらいいな、こんな場所で』そういう案が次々に了承されていった。

 ただ、リステアが賭博場は認めなかった。地上での賭博場で、最近殺人が起きたばかりだったから。


「設計仕様書を元に場所が作られたので、少しずつ地上から、ここで働いても構わない方々が訪れるでしょう。少々、高値になるでしょうが、安全な空間が確保されました」


 そう、ダンジョン内の物資輸送が価格高騰の原因ではあるが、売上の一部は、リステアがしっかり徴収する設計だ。だから、高値。ま、当然だね。

 冒険者各々が十分くつろぎ、体力回復したところで、リステアが集合をかけた。


「では、次の第7階層主を決める内容を発表します。食堂の目玉商品になって欲しいスライムそうめんの大食いです」


 スライムそうめんは、第2階層のスライムを天日干しして、水で戻した品。毒気を抜いたぷるぷるした喉越しがたまらないが、腹の中で若干膨らむ、腹持ちを考えたダイエット食品である。


 大食漢の冒険者も膨張するスライムに苦悶する。そんな中、唯一完食したのが、ガスロという若者だった。


「ぜぇんぜぇん、問題ないすぅ」


 酒を飲んでないのに酔っているような、妙な奴だ。


 第7階層入り口で、リステアがガスロに設計仕様書を手渡した。


「おろろろろ~」


 興奮するガスロに対して、皆が冷ややかな視線で送り出した。不安しかないが、階層主になった以上、他人が手を出せない。

 第6階層が安息地となったため、地上には戻らず、冒険者達は待機していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る