第5話
第4階層は、元々設計案があったのか、1週間も待たずに降りることができた。第3階層とは、また感覚が違いピリピリとした皮膚刺激があった。モンスターも精霊等実体を持たぬ種類が多かったり、通常攻撃が効かないので武器を選ぶ必要がある。
「ぐわぁっ」
探索中に、風魔法の真空波により切り刻まれた負傷者が出てしまった。速やかにパーティメンバーによる回復魔法が唱えられ、周囲を柔らかく温かな光が包み込む。
「おい、そんな全体回復魔法かけなくても、負傷者一人に集中しろよ」
「いや~、単体の回復魔法なんだよ、今の」
説明したくてうずうずしているトラーズがやってきた。
「見たかね!この階層は、魔法効果が3倍だ!2倍じゃ物足りない!」
「だから、回復効果が広がったのか。それに、いろんな所で爆発音や、熱風が流れ込んできてるし」
「この勢いで、第5階層の権利決定戦やんぞ!」
ざわつく冒険者達。魔法有利の勝負になると、誰しも思った。
「私は、次の階層の権利が欲しい!連続で階層主となる!だから、時間制限付き戦闘による勝負だ!」
トラーズは、有無も言わさず、設計仕様書を開き、魔法を唱えた。その魔法は、相手の体が小さくなるものだった。周囲にいる冒険者達は、あっという間に体長が15cm程になり、武器防具の大きさは元のサイズ。魔法が唱えられるものはあらゆる攻撃魔法を試すが、トラーズの有効範囲に接近できない。攻めをあぐねいていると、壁際に避難するパーティもいた。
「ほら、残り時間はあとわずかだ。このまま、風魔法で吹き飛ばしてやるぞ!」
トラーズが高位風魔法の詠唱に入った。全員を吹き飛ばし、死人を出すのも構わない程の威力がありそうだ。
そんな中、設計仕様書の死角に当たる位置から、一つのパーティが行動に移した。獣人の冒険者に魔法をかけ、光学迷彩が備わった。合わせて、この獣人が得意とする隠密行動スキルが発動。それに気付いた複数パーティが、やみくもに爆発魔法を放ち
爆音と弾幕により、トラーズの注意力を散漫にした。
「えぇぃ、鬱陶しい!吹き飛ばしてくれる!」
トラーズが、高位風魔法名を唱える瞬間、獣人がトラーズの顔の前に現れ、爪で両目眼球を切り刻んだ。いくら小さくなっても獣人のするどい爪である。言葉にならない叫び声を上げ、魔法詠唱の効果が無くなってしまった。
一斉に走り出す冒険者達。うずくまるトラーズによじ登り、全裸で防御できない状態であるにも関わらず、あらゆる魔法を顔周辺で唱えていった。耳元で爆発魔法、鼻には凍結魔法。傷ついた目周辺では火炎魔法が炸裂していた。
「そこの獣人!第5階層に走れ!お前が相応しい!」
素早い獣人が、第5階層入り口のモヤがかかった部分に入ると、設計仕様書がトラーズの元から離れ、獣人付近に落ちた。獣人が触れると、まばゆい光が体を包み、設計仕様書のページが勝手に開いた。その文言を音読すると、冒険者達の体が元の大きさに戻った。歓声が上がると同時に、全裸であることを思い出し、照れ恥ずかしながら防具を装着した。
若干の慢心を反省しつつ、知り合い冒険者からトラーズは回復魔法を受けていた。
「あ~、もう、権利はお前だよ」
トラーズが、ボヤく。
「我が名は、トコピ!第5階層の主となった獣人の忍者だ。しばし、待たれよ!」
挨拶をした後、第5階層へ降りていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます