決着


「だから、もし良かったら。俺と一緒に、残ったこの2つのドリンクを飲んで。ここで、『終わらせたい』んだ。ここで起きたことの、全てをね。勝手なことばっか言って申し訳ないけど、どうかな……?」



 ここまで来て、今の自分に出来ることは、ほとんどないだろうと拓也には思えた。ダイスケの言ったように、もし幸運にもここから逃げ出せたとしても、その後の人生はまたどん底が続くだけだ。あんな思いは、もうしたくない。そしてもちろん、死んだ奴らの負債を背負うなんて人生も、まっぴらごめんだ。


 だとしたら、ここは……。

 拓也はゆっくりと立ち上がると、ダイスケの方へ歩み寄り。「恨みっこなし、だな」と告げ、「ニヤリ」と笑った。


 それを見たダイスケも、あの「ニヤリ」という笑みを浮かべ。

「ああ、それでいこう」

 そう言いながら、ピンクの小瓶を手に取った。それに合わせて、拓也も緑色の小瓶を持ち上げ。コルクの栓を抜き、お互いの目を合わせると、「くいっ」と一気に飲み干した。



「ぐっ、ぐぅぅぅぅぅ……」

「う、ぐぐっ、ぐぐぐっ……」


 途端に2人とも呼吸が苦しくなり、胸が焼けるように熱くなると共に、苦み走ったものが口の中にこみあげてくる。ダイスケはこらえきれず、「がはっ!」と血を吐き、床に崩れ落ちた。その横で拓也も、唇の端に血を滲ませて、ヨロヨロとその場に倒れこんだ。



『これで、決まったな。最終的な敗者は、エントリーナンバーなしの、「ガイドマン」だ』



 再び、黒服男の声が聞えて来て。それと同時に、部屋の扉がガチャリと開き。黒服を来た奴らが3人ほどズカズカと部屋の中に入って来て、茫然とした表情のガイドマンを取り囲んだ。


「や、やめろぉ! やめてくれええええええ!!」


 ガイドマンの悲痛な叫びが虚しく響く中、黒服の奴らは容赦なく、ガイドマンの腕や腰をがっしりと掴むと。そのまま引きずるようにして、部屋の外へと連れ出して行った。



「いやだあ、いやだぁぁぁぁぁ」


 ガイドマンの声は、部屋の扉が閉じていくのに合わせて、フェイドアウトするように聞こえなくなり。最終ゲームの部屋の中には、拓也とダイスケだけが残された。そして、今まさに命の炎が消え去りそうになっている、お互いを見つめ。2人は残された最後の力で、静かに微笑み。そのままゆっくりと、目を閉じた。



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