第65話 番外編~アメリカの空
雪哉に、留学先で友人が出来た。日本から留学している田端という青年だ。田端もまた、ゲイであった。同じく、思春期の性的少数者を救いたいという志を持っていた。
「鈴城くんには、日本に恋人がいるの?」
二人とも忙しくしていたが、昼食の時間だけは、大学の庭へ出て、のんびりとランチの時間を過ごした。
「うーん、いたけど・・・別れてきた。」
雪哉はそう言うと、寂しそうに笑った。
「え、そうなの?なんで別れちゃったの?」
田端が驚いて聞く。
「だってさ、つき合ったまま留学したら、不安でしょうがなくって、勉強に身が入らないから。」
「それだけの理由で?相手に落ち度はないのに?」
悪気はないのだが、田端は素朴な疑問を口にした。
「あいつは、すっごくモテるんだ。放っておいたらどうなるか。きっと、今頃二人目の恋人でも作っているよ。」
雪哉がそう言うと、
「信じてないんだなー。もしかして、悪い人だったの?見た目だけが好きだったとか?」
田端が冗談めかしてそう言った。
「え・・・。」
だが、雪哉は意表を突かれた。
「そんな事、ないけど。でも、すっごく女にモテて、いつでも彼女がいて、だから、きっと2年半も会わずに、待てないと思って。」
ほとんど、自分に言い訳をしているようだった。
「鈴城くん、君の気持ちはよーく分かるけど、でもそれだと、彼の気持ちを考えていないよね?彼は、鈴城くんの事、それほど好きじゃなかったのかな。」
田端にそう言われて、雪哉は空を見上げた。青空が広がる。
「僕、自分勝手だよね。それは、分かっていたつもりだったけど・・・涼介の気持ち、考えてなかったな。こんなんじゃ、カウンセラーになんてなれないね。」
ふいに、下を向いてしまった雪哉の頭を、田端はポンポンと優しく叩いた。
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