第62話 10年後
東京の都心にあるホテル。俺はここに勤めている。ここは従業員も多く、朝勤務、夜勤務のシフト制。相変わらず接客業が向いている俺。もうけっこうベテランで、制服のスーツもそつなく着こなす。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。こちらにお名前とご住所をお願い致します。」
フロントで業務をこなす。
朝勤務なので、午後には仕事が終わり、家に帰る。
「ただいまー。」
「涼介、おかえり!もうすぐ僕出かけるから、涼哉をお願いね。」
「おう。涼哉、良い子にしてたか?ん?」
「あーう。」
「そうかそうか。よしよし。」
俺は涼哉を抱っこした。
そう、俺たちの子供だ。もちろん、どちらかが産んだのではない。養子縁組をして、うちの子になったのだ。雪哉はこれから学校のカウンセラーとして仕事に行く。帰ってくるのは7時頃。でも、その後朝早く俺が出かけるまでは一緒に居られる。それなりに、充実した毎日だ。子育てはとても大変だけれど、二人で協力しながらする事は、やっぱり楽しい。
そして、時々俺はライブに出る。神田さんが再び俺らを呼び集め、相変わらずアニソンバンドをやっている。30代になっても、まだ黄色い声援が飛ぶ事もある。
「リョースケー!」
って、懐かしいお姉様方も健在だ。
毎年スキーにも行く。今はスノボの方が流行っているとか言われても、気にしない。今年は涼哉を俺が見ている間に雪哉が上級コースを滑って来たり、なんと雪哉が涼哉をおんぶして、中級コースを俺と一緒に滑ったりした。
いやー、相変わらず雪哉がスキーをするとカッコイイ。歳を取ってもずっとスキーは続けて欲しいな。
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