第42話 ラ・ブ・ホ

 「あの、さ。ごめん。軽いやつだとか、幻滅したなんて言って。」

歩きながら、俺は雪哉に謝った。

「いいよ。それより、僕の方こそごめん。マッキーと、涼介にあてつけるような事して。」

雪哉が俯きがちに言った。

「いや、いいよ、全然。」

ホッとして、思わず笑みがこぼれた。良かった、なんか分かんないけどわだかまりが解けたみたいで。

「みんな、あれなんだよ。あれ。」

雪哉は振り返らずに、後ろを人差し指で指して言った。それだけで分かる。美雪ちゃんを見るとああなってしまう、数多の男達。

「ああ。」

ちょっと笑って相づちを打つと、

「涼介は、違うんだね。」

雪哉が言った。

「え?何?」

俺が聞き返すと、

「涼介は、美雪に取られなかった。ありがとう。」

雪哉は歩きながら、頭をコツンと俺の肩に乗せた。すぐに放したが・・・か、可愛い!俺はガバッと雪哉の肩を抱いた。俺、幸せだ。

「どうして、涼介は大丈夫なの?」

肩を抱かれたまま、雪哉がそう聞いてきた。

「女には飽きてるとか?モテモテだもんね。」

雪哉がチラッと俺の顔を見て言う。

「言っただろ?お前と美雪ちゃんは全然違うんだよ。雪哉の方が可愛い。」

「そうなの?」

「うん。ねえ、雪哉の部屋、行ってもいい?」

俺が聞くと、

「あー、美雪が邪魔するからなあ。」

雪哉が言いよどむ。

「じゃあさ、ラブホ行く?」

更に耳元に口を寄せてそう言うと、

「え?いや、でも、僕行った事ないし!」

雪哉は慌ててそう言って、俺の腕から出て離れた。なんで離れるんだよ。

「行った事ないなら、行ってみようよ。」

「でも。」

「そんなに高くないよ。割り勘にすれば、飲みに行くより安く済むって。」

「だけど、入るのが恥ずかしいよ。」

「大丈夫だって。旅行客だけど、金がないからここに来たようなフリしてればいいじゃん。」

「何それ?」

「だから、観光ホテルやビジネスホテルは高いから、ラブホに泊まるだけっていう設定で。」

俺がそう言うと、雪哉はあはははと笑った。そして、

「何か変わるの?それで。」

と言う。

「何も変わらないけど、気分の問題だろ?そういう人達もいるんだから、大丈夫だって。」

「つまり、恋人じゃなくて、友達のフリして入るって事?」

「まあ、そういう事だな。」

雪哉はそこでちょっと黙った。なので、俺は実行に移す。

「じゃ、決まりね。」

そう言って、今度は手をつないだ。そして、徐々に暗くなりつつある道を駅へと進み、繁華街へと向かったのだった。

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