第40話 ワンチャンあり?

 それ以上何事もなく食事が終わり、解散した。その後で、牧谷からメッセージが来た。ちょっと話したいから、明日の昼休みにある教室へ来いと書いてあった。

 翌日、指定された教室へ行くと、牧谷の他には誰もいなかった。

「よう。」

「おう。」

とりあえず挨拶をして、近くの椅子に座る。買ってきたサンドイッチなどを広げ、俺が食べ始めると、牧谷が話し始めた。

「あのさ、君たちどうなってるの?」

「え?」

いきなり、なんだ?

「ミッキーとユッキーは、喧嘩でもしてるわけ?」

「ああ、まあ・・・そうなんだ。」

渋々認める。

「それで、どうして俺が間に入らされてるんだよ。」

確かになぁ。たまたま本を返すタイミングだっただけで巻き込まれて。いや、待てよ。それがもし鷲尾だったとしたら、この役割は鷲尾だったのだろうか。まさか、牧谷だから、牧谷がそれなりにイケメンだから巻き込んだとか。だとしたら、雪哉め、やっぱり軽いやつじゃないか。

「ミッキー?」

俺が黙ってしまったので、牧谷が俺を呼んだ。

「ああ、えーと。それは、つまり・・・。ほら、あれだよ。」

「何を言ってるんだよ。もしかして、二人はつき合ってるわけ?それで、痴話げんかでもしたから、ユッキーは俺と仲良くしてミッキーに当てつけてるってわけ?」

おお、よく分かっているじゃないか。

「適切な説明、ありがとう。」

「やっぱりそうかぁ。ミッキーに取られちゃったんだなー。危ないとは思ったんだよね。ミッキーはイケメンだからな。」

「雪哉は面食いだからな。多分。」

自分でこれを言うのも何だが。

「でも、喧嘩中って事は、ワンチャンこのまま別れるって事もありなわけ?いや、そうだよ。俺今すげーチャンスじゃね?」

牧谷がちょっと興奮気味に言う。

「いや、それは。」

俺が言いかけても聞く耳持たず、

「そうと分かれば、もう遠慮はしないよ。俺はこのチャンスをものにするからね。じゃ!」

呼び出しておきながら、牧谷は俺を置いてさっさと行ってしまった。俺はそのまま座って飯を食った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る