第17話 チャンスあり?
生ビールを一気にあおったので、足下がふらつく。担いだギターに振り回され、余計に体がフラフラした。まさか、神田さんと雪哉がつき合っていたなんて。ショックだ。雪哉には恋人はいないと聞いていたのに。ん?そうじゃないな。女の影がないと言われたんだ。そりゃそうだ、つき合っていたのは女ではなく男だったんだから。
そうか。逆に、これは喜ぶべきなんじゃないだろうか。雪哉が男とつき合う気がないのなら、俺がいくら頑張っても無理だ。しかし、男とつき合う気があるならば、俺にもチャンスがあるではないか。
酔っているから気が大きくなっているのかもしれないが、俺は決心した。必ず雪哉を手に入れてみせる。神田さんから奪ってやる。
ふと、合宿中に二人が言い争っていた事を思い出した。今思えば、迫っている神田さんを、雪哉が拒絶していたようだった。だとすれば、最近あまり上手くいっていないのではないか。いや、それは余りに都合良く解釈しすぎかな。
翌日、昼まで寝ていた俺は、初めて恋の苦悩とやらを味わっていた。雪哉に会いたい。でも、気まずい。話したい。でも、何を言ったらいいのか分からない。悶々と夕方まで考えていて、とうとう我慢出来なくなり、俺は雪哉に電話をかけた。
ところが、雪哉は電話に出てくれなかった。時間を置いて何度かかけてみたが、やっぱり出てくれなかった。翌日、かけ直してくれるかと期待して待っていたが、それも叶わず。LINEで「話したい」とメッセージを入れたが、それも既読スルー。どうやら避けられているようだ。それか、神田さんが監視していて、俺と連絡を取るのを禁止しているとか?いや、神田さんはそんな陰湿な人じゃない。と、思う。
スキー部の合宿がもう一度あるという話だった。今度は検定が受けられるらしい。けれども、急に言われても金がないし、そもそもスキー板やブーツを買わないとレンタル代が高くつく。と言って、買いそろえるにはやっぱり金がないしで、行く事が出来なかった。きっと雪哉は行ったのだろう。行けば会えたのに。会って、気持ちを確かめたい。俺とつき合ってくれなくても、少しでもチャンスがあるのかどうか、せめてそれだけは教えて欲しい。
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